バラが咲いた

 バラの開花時期は、 春(5~6月)と秋(10~11月)が多く、今は秋のバラが咲いている。夏の暑い時はひと休みのようである。甘い香りがあり、香水の材料にも使われる。ギリシャ神話では、愛と美の女神アフロディーテが海から誕生したときに、大地がそれと同じぐらい美しいものとして、バラの花を作ったとされている。ギリシャの詩人アナクレオンは「バラなる花は恋の花、バラなる花は愛の花、バラなる花は花の女王」と詠っている。また、一輪のバラを天井につるしてその下でした話は一切秘密にする、というのがローマ時代のしきたりで、「バラの下で」という言葉が「秘密に」という意味になって今に残っている。
 イギリス王室の紋章である「チュードル・ローズ」は、ランカスター家とヨーク家の間に起こった「バラ戦争」の後で両家が結ばれて赤バラと白バラを組み合わせた紋章となったもので、このバラがイギリスの国花となった。
 バラにまつわる私の想い出は二つ。浜口庫之助が、童話『星の王子さま』の薔薇に触発され作詞・作曲したと言われるのが「バラが咲いた」で、これが最初の想い出。この歌詞の「バラが咲いた」は花ではなく、自らの子供を指しているとすれば、「バラが散った」はその子がいなくなったことになる。でも、それは心の中にいつまでも残っていてほしいもの。そんなことを想うと、何とも見事な歌である。
 もう一つの想い出はウンベルト・エーコの『薔薇の名前』(Il Nome della Rosa, The Name of the Rose)。「オッカムのカミソリ」のオッカムのウィリアムは経験科学につながる唯名論を唱え、彼がバスカヴィルのウィリアムに重なる。中世の普遍論争は、実念論唯名論の争いで、例えば「薔薇」について、「その薔薇のその名前」(Il Nome della Rosa)」は、「その名前」が普遍概念として実在するか、「その薔薇」だけが具体的に実在して、「その名前」は言葉に過ぎないのか、というもの。オッカムのウイリアム、つまりバスカヴィルのウィリアムは唯名論の立場。

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