秋(7):クスノキ

 「となりのトトロ」に登場する塚森(鎮守の森)は巨大なクスノキとその周りの樹々からなっている。我が家の前庭にも巨樹ではないクスノキが数本並んでいる。湾岸部の公園や歩道にはクスノキが多く植えられ、中には大きなものも相当ある。
 一般的にクスノキに使われる「楠」字は本来は中国ではタブノキを指す。木肌は綿密で、耐湿・耐久性に優れ、葉はつやがあり、革質で、先の尖った楕円形。古い葉は落葉するが、そのときに紅葉する。だが、落葉樹とは違い、クスノキが丸裸になってしまうことはない。枝先に伸び始めた黄緑色の新葉と、紅葉した古い葉、そしてまだ紅葉していない濃い緑の葉が混在する。秋には直径7-8mm程度の青緑色で球形の果実が紫黒色に熟す(画像)。中には直径5-6mm程度の種子が一つ入っている。
 クスノキ全体から樟脳の香りがする。樟脳はクスノキの枝葉を蒸留してつくられ、防虫剤や薬品に使用される。剪定すると切り口からハッカのような芳香が漂う。クスノキの材は耐朽力が強いため建材や仏壇などに利用される。実際、飛鳥時代(7世紀)の仏像はほとんどがクスノキで作られていた。隋の仏像は芳香のある白檀で作られていたが、日本には白檀がなく、同じく芳香のあるクスノキが使われたのではないかと推測されている。私たちに馴染み深い広隆寺の国宝「宝冠弥勒」(画像)もクスノキが使われている。

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