エノコログサ

 子供の頃からずっと見慣れてきたのがエノコログサ。私だけでなく、ほとんどの日本人が同じように見慣れてきたエノコログサ。人は両親や家族だけでなく、自らの周りのものをそれが誰か、何かを気にする前に、当然の如く受け入れている。周りの動植物にもそのような最初から自明の存在が幾つもある。生まれ育った環境で、文句なしに存在を疑わないもの、私にとっての自明の存在の一つがこのエノコログサ。名前など意識する前に実存していて、「それは何か」を知る前に既にそこにあった。その在り方は概念的ではなく、端的に、即時的にそこにある。気がつけば、そこにあったのである。「気づけば、あった」ものは疑うことがとても難しいものである。私にとってそんな仕方で存在するのがエノコログサで、植物園にはないものである。
 エノコログサ(狗尾草)はブラシのように長い穂の形が独特な雑草。夏から秋にかけてつける花穂が、イヌの尾に似ていることから、犬っころ草(いぬっころくさ)が転じてエノコログサという名前になったとされる。誰も食べようとは思わないが、アワ(粟)の原種なので、種子の部分を脱穀・脱稃すれば食べられる。食べるときはアワと同様、粒のままでも製粉しても食べられる。だが、私はまだ食べたことがない。

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