コスモス

 コスモスは「秋桜」と書くから夏から秋に咲く花かと思いきや、別名がオオハルシャギク(大春車菊、大波斯菊)で最近は既に今頃から咲いている。コスモスに似た「ハルシャギク」の由来は波斯(ペルシャ)の菊。ペルシャとは全く関係ない謎のネーミングなのだが、大春車菊のネーミングも謎である。
 私たちが通常「コスモス」と呼んでいるのは、学名を「Cosmos bipinnatus」といい、和名が「アキザクラ」又は「オオハルシャギク」。一方、「キバナコスモス」は、学名「Cosmos sulphureus」で前者とは同科・同属だが、種が異なる。だから、交配は不可。両種とも1年草で、原産地も同じメキシコである。
 コスモスの日本への渡来は1896(明治29)年で、草丈が2~3mになって分枝し、葉の形は羽状に細かく切れこみ線形になる。コスモスもキバナコスモスも18世紀末にメキシコからマドリッドの植物園に送られ、ヨーロッパに渡来した。キバナコスモスはオオハルシャギクと比べて葉が幅広く、切れ込みが深い。オオハルシャギクよりも繁殖力が旺盛。
 コスモスの花期は比較的長く、6月から11月にかけて直径3〜5cm程度の白、黄、またはオレンジの花を咲かせる。改良種として濃い赤色の品種も作られている。花は一重咲きと八重咲きがあるが、園芸品種として市場に出回っているもののほとんどは八重咲き。先日述べたオオキンケイギクはキバナコスモスとよく似ているので、要注意。
 さて、「コスモス」とは度肝を抜くような名前だが、私のような世代だとキューブリックの「A Space Odyssey」やビートルズの「Across the Universe」が浮かんでくる。space と universe は両方とも「宇宙」を指すが、space は地球の大気圏より外の空間、universe は地球を含めた万物。space は人の生活世界の常識概念であり、universe は物理世界の科学概念。肝心のcosmosは円運動からなる秩序あるシステムとしての宇宙で、chaos(混沌)の対義語(だから、コスモスはかつての科学概念で、今では擬似科学あるいは形而上学の概念である)。
 最後に問い二つ。コスモスの花は秩序ある宇宙とは結びつかず、「秋桜」の方がしっくりいくと感じるのは大正以降の文学者たちがよく使ったせいだろうか。また、あなたなら、コスモス、「秋桜」という言葉、コスモスの知覚のいずれを主にし、いずれを従にするだろうか。

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コスモス

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コスモス

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キバナコスモス

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オオキンケイギク