スカシユリ

 映画「野のユリ」は新約聖書マタイ伝6章28節の「野のゆりがどのように育つかをよく見なさい。ほねおることも、紡ぐこともしない。あなたがたに言っておく。栄華をきわめたソロモン王でさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。」と、イエスが「思い煩ってはならない」ことの喩えとして語ったことに由来します。このように着飾ったユリは世界に100種以上の原種があるとされ、ウィルソンは「ヤマユリ亜属」、「テッポウユリ亜属」、「カノコユリ亜属」、「スカシユリ亜属」という4つの亜属に分類しました。
 ヤマユリは、ヤマユリ亜属の交配親となっている原種です。本州が原産地の日本固有種です。大輪の花を咲かせ、白い花の中心には黄色の筋が入り、全体に赤褐色の斑が入っています。また、球根は「ユリ根」として食用です。ヤマユリ亜属は、漏斗状(ラッパ型)の花を横向きに咲かせ、花が大きく、甘い香りを発するものが多くあります。ササユリは、テッポウユリ亜属の交配親となる原種の一つで、これも日本を代表するユリです。花色は淡いピンクで、花粉が赤褐色をしています。リーガル・リリーはテッポウユリ亜属に分類される原種です。花は短い筒状でラッパのように開き、花の内側は白く、基部は黄色、外側は桃紫色をしています。スカシユリは、スカシユリ亜属の原種です。数枚の花びらは重ならず、付け根の部分が少し開いていて、オレンジや黄などで鮮やかな色です。スカシユリ亜属は花を上向きに咲かせるのが特徴です。スカシユリやエゾスカシユリ、ヒメユリが代表的な原種です。オニユリは、カノコユリ亜属の原種で、食用にするため中国から日本へ伝わりました。花びらは、オレンジ色で、黒い斑点が入っています。カノコユリ亜属は、下向きに花を咲かせます。カノコユリ、イトハユリなどはこの系統に分類されます。
 さて、画像のスカシユリは、エゾスカシユリが南下しながら分化したと考えられている日本固有のユリの品種です。海岸の岩場の割れ目や崖に生育しています。茎は太くて直立しますが、岸壁に生育するものは、斜めか垂れ下がって生長します。エゾスカシユリよりも花びら(花被片)が狭く、とくに茎の基部が細くて透けて見えることが、「透かし百合」の和名の由来とされています。日当たりをとても好み、野生種としては栽培しやすいユリです。茎は直立し、茎の頂に直径10cm程度の赤褐色の斑点を持つ橙色の花を咲かせます。花は盆形で、先端が反り返り、橙赤色の地に多くの褐色の斑点があります。香りはありません。近縁にあたるエゾスカシユリと比べ、花柄やつぼみに綿毛がないこと、全体にやや小型であることが特徴です。葉は、披針形という、平たくて細長く先のほうがとがり、基部のほうがやや広い形です。葉質は厚く、艶があります。

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