2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

秘仏と御開帳(1)

全国に「善光寺」という名の寺院が多数存在します。鎌倉時代に「善光寺聖」が全国に善光寺信仰を広めたからです。善光寺聖は諸国を遊歴する半僧半俗の遊行僧で、彼らは信州から遠く離れたところまで「善光寺如来」の分身を背負って出かけ、信仰を広げました…

シャクナゲの花

昭和世代の私は「シャクナゲ」と聞くと、シャクナゲ自体より「しゃくなげ色に たそがれる はるかな尾瀬 遠い空」という一節を思い出してしまう。「夏の思い出」に登場するシャクナゲ(石楠花)は高山種の花木。だが、それが最近は公園でもよく見かけるように…

トキワイカリソウの花

船の錨にそっくりなのがトキワイカリソウの花で、そこからイカリソウという名前がつきました。「トキワ」は、冬でも葉が落ちずに残っている常緑の植物を指しています。メギ科イカリソウ属のトキワイカリソウの分布は北陸、山陰の日本海側に多く、その花のほ…

スズメノエンドウ、カスマグサ、そしてカラスノエンドウの花

カスマグサ(かす間草)はソラマメ属のつる性の越年草で、田畑や空地などに生える雑草です。「カスマグサ」という名前の由来は「カラスノエンドウ」と「スズメノエンドウ」の中間の大きさであるためで、カラスとスズメの間、「カス間」からつけられたようで…

ヨウコウ (陽光)の花

ヨウコウは日本原産の交雑種のサクラで、高岡正明がアマギヨシノ(天城吉野)とカンヒザクラ(寒緋桜)を交雑させて作り出した栽培品種で、品種登録は1981年です。ヨウコウはソメイヨシノよりも少し早く咲き、二日ほど前にほぼ満開になりました。鮮やかな紅…

モクレンの花たち

モクレン(木蓮、木蘭)はモクレン科モクレン属の落葉低木。花が紫色であることから、シモクレン(紫木蓮)とも呼ばれます。外側が紫色で、内側は白色の花を春に咲かせるモクレンは、平安時代に中国から渡来しました。本来は漢方で「辛夷」(しんい)と呼ば…

ヤグルマギクの花の色変化(いろへんげ)

早春の陽の中でヤグルマギク(矢車菊)が鮮やかに咲き出しています。キク科のヤグルマギクはヨーロッパ原産。麦畑などに多い雑草でしたが、園芸用に改良され、紫、白、桃色などの品種が作られました。ヤグルマギクはドイツ、フランス、エストニアの国花です…

ロシアと宗教

ソ連の消滅後、ロシアが再び世界史の舞台に悪役として登場しています。1991年のソ連崩壊後に成立したロシアは広大な領土の多数の民族をいかに統合し、どのように新たなナショナル・アイデンティティ(国のあり方)をつくっていくかが最大の課題でした。それ…

シデコブシ(四手辛夷)の花

コブシやハクモクレンの次がシデコブシで、モクレン科モクレン属の落葉小高木。やはり今花盛りである。和名は花の形がコブシに似ていて、多数の花被片が白く細長く伸びている様子が「しで(紙垂、四手; しめ縄や玉串につける紙)」のように見えることに由来…

正教会の中の戦争

ロシア正教会のキリルモスクワ総主教がロシアのウクライナ侵攻に祝福を与えたことで、世界の正教会は分裂の危機に陥っています。プーチン大統領の盟友キリル総主教は今回の戦争を退廃的な西側諸国への対抗手段と考えていますが、その二人が共有するのが「ル…

カジイチゴの花

今年もまたカジイチゴの花が咲きました。クサイチゴは草本、つまり草(くさ)ですが、カジイチゴは落葉低木です。背の低いカジイチゴは、クサイチゴと区別しにくいのですが、葉の形がまったく違います。カジイチゴの葉にはカエデのような切れ込みがあります…

呼称の変化

ロシア系住民保護を理由にウクライナに侵攻したロシア。その前例が2008年のジョージアへの侵攻です。黒海の東岸のジョージアは、北岸のウクライナとの間にロシアを挟み、人口が370万人ほどの小国。2008年の侵攻があったため、ウクライナやアメリカはロシアの…

シバザクラの花たち

今年の湾岸地域はソメイヨシノよりオオシマザクラの開花の方が早いようです。いずれにしろ、桜の樹の花が咲き出す前に咲いているのが、地上のシバザクラで、色んな花模様、花色を見ることができます。その名前も凝っていて、例えば、タマノナガレ、オータム…

心身二元論を進化論的にも見る(4)

映画の世界と現実の世界の間の乖離を考えるなら、夢と現実、犬の世界と猫の世界、天上と地上の世界、そして冥界と顕界といった、似たような乖離が数多く頭に浮かんできます。これらのどれとも質が違うのが心的世界と物理世界です。二つの間に因果関係を考え…

コブシの花

昨日ハクモクレンについて述べましたが、そのハクモクレンに似たコブシ(辛夷、拳)の花もやはり満開です。コブシはモクレン科モクレン属の落葉広葉樹で、北海道から九州までの山林や原野に自生しています。早春に香りのある白い花を咲かせ、春の訪れを告げ…

心身二元論を進化論的にも見る(3)

心身の間にあるとされる因果関係はどのようなものなのでしょうか。心身の関係は歴史的に次第につくられてきた事実であり、リンゴが落体の法則に従うのとは明らかに異なっています。落体の法則それ自体は進化しません。心身関係とは、偶然的に介入(intervene,…

ハクモクレンの花

ハクモクレン(白木蓮)はモクレンの仲間で、文字通り白色の花をつけます。子供の頃はハクモクレンをモクレンと思い込んでいましたが、「木蓮」という名前はハス(蓮)に似た花が咲く木という意味で、私の記憶の中でハクモクレンは仏教と強く結びついていた…

心身二元論を進化論的にも見る(2)

(デカルト的な心身二元論の位置) まずはデカルトの心身二元論を振り返っておきましょう。彼の心身二元論は子供でも簡単にわかる単純な構図になっていて、心的なものと物理的なものの間に因果関係があるという説明は私たちの生活世界の実像を見事に捉えてい…

レンギョウの花

湾岸地域の公園や道筋で目立つのがレンギョウ(連翹)の黄色の花で、それが今一斉に咲いています。葉が出る前に一斉に咲き出し、黄色で埋まります。レンギョウはモクセイ科レンギョウ属の総称。古名は「鼬草」(いたちぐさ)。レンギョウは中国原産で、江戸…

心身二元論を進化論的にも見る(1)

心身二元論となれば、誰もが思い起こすのがデカルトの心身二元論です。「心と身体は異なる実体であり、両者の間には密接で直接的な相互作用がある」というのが彼の心身二元論の主張で、長い間多くの人には当たり前の事実(?)として受け入れられてきた、い…

トサミズキとヒュウガミズキの花

春に先ず花が咲き、次に葉が出てくる木が意外に多いのですが、その二つがトサミズキとヒュウガミズキです。どちらもよく似た黄色の花をつけます。どちらも「ミズキ」とついていますが、ミズキ科の樹木ではなく、マンサク科の樹木です。 隣の小学校にヒュウガ…

「美しい」花は自然種なのか、それとも人工物なのか?

自然的(natural)なものは人工的(artificial)ではないというのはごく当たり前のことだと思われがちですが、100%人造のものはあるでしょうか。あるいは、100%自然のものはあるでしょうか。前者の問いにはNo、後者の問いにはYesと答えたくなります。どん…

ムラサキサギゴケに遭遇

ムラサキサギゴケ(紫鷺苔、Mazus miquelii)は、ハエドクソウ科の多年草。別名、サギゴケ(鷺苔)。白花の場合に限ってサギゴケと呼ぶこともあるようです。花が紫色で、形がサギ(鷺)に似ていることから、命名されました。 ムラサキサギゴケの同属植物がト…

トキワハゼ(常盤黄櫨)とツタバウンラン(蔦葉海蘭)の花

この二つについては既に何度か述べてきたのですが、いずれも人がその花を楽しむには小さ過ぎて、人間用のサイズでないことが実感できます。野生の花のサイズは人間向きでないことがよくわかります。もう一つ気になるのは、二つがよく似ているように見えなが…

「ひまわり(I Girasoli)」雑感

ウクライナ国旗の由来には二説ある。一説では、青色が空、金色はステップ(草原)に豊かに実る小麦で、他説では、青色が水、金色は火。あるいは、黄色はヒマワリという説もある。青い空とヒマワリとなれば、1970年の「ひまわり(I Girasoli)」(1970年、イ…

オウバイモドキの花

オウバイ(黄梅)は迎春花と呼ばれるツル性低木で、黄色い花を咲かせます。このオウバイによく似ているのがたオウバイモドキ(黄梅擬)です。オウバイは、落葉性、花期が2-4月、花の径は2-3㎝で一重、オウバイモドキは常緑性、花期は3-4月、花の径は4-5…

白花のヤハズエンドウ

白花変種(はくかへんしゅ)とは、本来は色のついた花を咲かせるはずの種なのに、花弁で色素が形成されず、白い花を咲かせる個体を指します。いわば、花のアルビノです。カルコン(黄色)、フラボン(淡黄色)、アントシアン(赤や青)等の色素の発現に関わ…

秘仏、御開帳と情報公開:「見せる」と「隠す」

浅草寺本堂には秘仏の聖観音(しょうかんのん)像が安置されています。全く公開されない「絶対の秘仏」は食べられないお菓子のようなもので、私には不可解な存在なのです。でも、特定の日に限って「御開帳」を行う善光寺の阿弥陀三尊像のように、本尊像は絶…

シキミの花

シキミ(樒)はマツブサ科シキミ属の常緑小高木で、葉は厚くつやがあり、春に淡黄白色の花を咲かせる(画像)。秋から冬にかけて星型の実をつけるが、この実には毒成分が多い。実の形状は中華料理で多用される八角に似ていて、誤食されやすい。仏事に用いる…

主観的状態の表現:能楽

私たちは見るもの、聞くものを所与のもの(the given)、生の情報やデータ(raw information, raw data)と呼び、ありのままに直接受け取ると考えます。兎に角、私たちはまずそれらに気づくのです。この辺までが「客観的」と呼ばれます。気づいたものについ…