2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

真夏のクモたち:雑記

以前、私の好奇心を呼び起こしたのがクモの「隠れ帯(白帯)」だった。ナガコガネグモの幼体は、自分の居場所の周りに隠れ帯をつける。ナガコガネグモの円網の中央には,太い白帯がついている(画像)。ナガコガネグモだけではなく、コガネグモにも白帯が見…

大乗仏教の宗教改革:方便

聖徳太子の時代から日本で最も親しまれてきた経典が『法華経』。そこで説かれているのが大乗仏教の教えである。 1大乗経典の傑作:『法華経』 西暦1世紀前後に、伝統的な原始仏教に対して新しい宗教改革運動が起こる。これが大乗仏教の始まりで、新しい経典…

サルスベリの花

湾岸地域にはサルスベリ(百日紅、猿滑)の木が多い。公園だけでなく、大きな通りの街路樹としても数多く植えられ、それらが今咲いている。色も赤、ピンク、白と賑やかである。花が美しく、耐病性もあり、必要以上に大きくならないため、好まれるようである…

中国の仏教

中国に入ってきた仏教に対する最初の仕事は、経典の中国語への翻訳。インド人翻訳家の鳩摩羅什や玄奘三蔵が色んな経典を翻訳しました。玄奘三蔵は翻訳だけでなく、仏教の資料も輸入しました。彼は三蔵法師として『西遊記』の主人公になり、孫悟空や猪八戒と…

釈迦の仏教から大乗仏教へ

聖徳太子以来、日本で最も親しまれてきた大乗経典と言えば『法華経』。インドでは西暦1世紀前後に新しい宗教改革運動として大乗仏教が起こります。大乗仏教は自らの思想を表現し、布教するために新しい経典をたくさん創作しました。大乗仏教の改革者たちは新…

カリンの実

カリン(花梨)は、バラ科のカリン属の落葉高木。春にカリンの花を紹介した。今は既に実が大きくなっている。その実はカリン酒などの原料になる。カリン属に近縁なのがマルメロで、その実もカリンによく似ているが、マルメロの方がややでこぼこで丸型なので…

釈迦の仏教(2)

釈迦が亡くなると、弟子たちは記憶した釈迦の教えをまとめます。これが初期の経典で、どれも口伝です。経典は「如是我聞(私はこのように聞きました)」という言葉で始めるという約束になっていて、口伝形式は次第に一定の書式をもった文書になっていきます…

辛夷の集合果からの連想

文系の若者なら、人の欲望と想像力を巧みに混じり込ませて辛夷の集合果の形状をネタに惡の華をまき散らすこと必定でしょうが、私にはそんな才覚はありません。それでもオッカナビックリ、まずは映画作品をネタに使ってその真似事をしてみましょう。 まず、コ…

コブシの集合果

ハスとスイレンは見かけは似ていても、まるで別物。でも、コブシ(辛夷)とモクレン(木蓮)は、共にモクレン科モクレン属の落葉広葉樹。いずれが好きかと問われても、私には優劣つけがたしです。コブシの花はふつう一個の雌しべをもち、これが成熟して一個…

釈迦の仏教

長い仏教の歴史の中で日本仏教を考えると、三つの歴史的な事柄が浮かび上がってきます。それらは、大乗仏教の勃興、その中国化、そして鎌倉新仏教の誕生です。それらを知るために、まずは釈迦自身の考えを知る必要があります。釈迦の仏教は現在の日本仏教と…

真夏の自然:ヒルガオとキカラスウリ

今年の夏が特別というのは人の事情だが、今年の夏は妙にセミが多く、炎天下、樹に突き刺さるかのようにセミの声が響き渡っている。 ヒルガオ(昼顔)はヒルガオ科の植物。アサガオと違って昼になっても花がしぼまない。蔓性の多年草で、春から蔓が伸び始め、…

驚きのない世界と驚きだらけの世界

私たちは様々な世界で生きています。常識的な日常の世界、個人の精神的な世界、科学的な世界等々、複数の世界が共存し、それぞれ相対的な位置をもっています。そのような多様な世界の中から二つの世界を取り出し、比べて見ましょう。そして、それらが私たち…

義理と人情:スケッチ

義理と人情となれば私の年代は高倉健のヤクザ映画を思い出してしまうが、その起源は江戸時代。江戸初期の朱子学者林羅山の『藤原惺窩先生行状』に義理が登場する(藤原惺窩は羅山の師)。義理は「人の履むべき道」という意味で、朱子学によって導入された。…

トチノキの実

近くの公園にはトチノキの大木があり、今は大きな葉が日陰をつくってくれています。実が葉の間に見え、何個かは落下しています。 トチノキはトチノキ属の落葉広葉樹ですが、同じトチノキ属のマロニエ(西洋栃ノ木)は、16世紀にヨーロッパで街路樹として植栽…

花桃の実

今は桃の季節。甘くて大きな桃が店に並んでいる。私には桃はお盆の果物である。春先に花の綺麗な花桃を紹介したが、その花桃も実をつけている。 花桃の照手シリーズは、神奈川で品種登録されたもので、種類は、赤い「照手紅」、白い「照手白」、ピンクの「照…

私の仏教史断片

鎌倉仏教は比叡山で修行した天才僧侶たちの実践活動によって生み出されました。 浄土経系の宗派(浄土宗、浄土真宗、時宗など)は、いずれも浄土三部経(『無量寿経』、『観無量寿経』、『阿弥陀経』)に基づき、念仏を唱えることがその主な宗教活動です。中…

夏のユリ

お盆の頃の花の代表の一つがユリ。湾岸地域でも半ば野生化したユリがあちこちで咲いている。品種を特定しようとするとこれが意外に厄介で、私にはお手上げ。 テッポウユリは日本固有のユリ。ラッパに似た花を横向きに咲かせるが、切り花用として出回っている…

最澄と空海の役割

日本へ仏教が伝わって来たのは6世紀。新羅に対抗しようと百済の聖明王は日本の援軍派遣を願い、当時最先端の仏像や仏典を日本に贈りました(関山神社の銅造菩薩立像もその一つ)。仏教に賛成の蘇我氏、反対の物部氏が争い、勝ったのは蘇我氏。そして、本格的…

お盆に仏教の歴史を再訪しよう(2)

5仏教の伝播と教義の変質 中国に伝わった仏教は、経典の翻訳から始まる。鳩摩羅什がインド人翻訳家として有名。わが国では唐時代の玄奘三蔵が翻訳した経典が知られている。玄奘三蔵は翻訳家というよりも、中国に不足していた仏教関連資料の輸入に貢献したこ…

クサギの花

クサギ(臭木)はビックリ仰天の名前だが、日当たりのよい野原によく見られるシソかの落葉小高木。昨年初めて目にしてその実の色に魅了された(実の画像は昨年のもの)。葉に異臭があることからこの名がついたのだが、錠剤のビタミンBの匂いに似ていて、なぜ…

お盆に仏教の歴史を再訪しよう(1)

仏教は長い歴史をもつ。その歴史の中で日本仏教にとって特筆すべきなのは、大乗仏教の勃興、その中国化、鎌倉新仏教の誕生の三つ。それらをまとめてみよう。 1仏教の誕生とブッダの思想 ブッダが生まれたのは紀元前5世紀頃(縄文時代の終わり)で、その一生…

コガネムシ

「黄金虫」という名前の通り、光沢がある甲虫。このところ、あちこちでコガネムシの姿を見る。それもかなりの数で、花の終わったアジサイの葉が食べられ、交尾の姿が多い(画像)。 コガネムシの成虫は晩春から初夏にかけて羽化して葉や花などを食べ、夏に土…

滅びの美学:『平家物語』と限界集落

世界規模での地球温暖化や格差社会、人口増大や貧困、日本での少子高齢化といった問題に直面し、自然や社会の持続可能な存続を模索するという試みや話が最近は滅法多くなっている。私自身、そんな話をよく聞き、自分で考えもする。絶滅、消滅をどのように免…

モミジの竹とんぼ

モミジの竹とんぼとはモミジの種のこと。モミジは公園の定番だが、緑が濃い今の季節、緑の中でも際立って鮮やかなのがイロハモミジ。イロハモミジという名前は、手のひら状に分かれた葉の裂片を、はしからイロハニホヘトと七つ数えることからきているといわ…

表情は何についての表情なのか

表情が表現しているのは思考ではなく、感情だと考えられてきた。だから、表情だけによって哲学も科学も表現することはできないが、人の喜びや悲しみはそれなりに表現できると信じられてきた。辞書風には表情(facial expression)は感情に応じて身体各部に表…

マテバシイ

マテバシイ(馬刀葉椎、全手葉椎)はブナ科マテバシイ属の日本固有の常緑広葉樹。和名は葉がマテガイに似たシイノキという意味。かつて薪や炭を作るために植栽されたものが野生化し、現在では房総半島から沖縄まで広い範囲に見られる。湾岸地域でもあちこち…

知識、情報、そして文脈(4)

知識の形式となれば、誰が何と言おうとその典型は科学理論。数学言語を使った理論の公理系がその最も抽象的な姿で、正に知識の象徴的な形態。実際は物理理論の解釈(=モデル)が通常私たちが物理理論と呼ぶものになるのだが、その物理理論を使った最終ゴー…

ビブルヌム・ティヌス

運河沿いの緑道で見つけたのが舌を噛みそうな名前の植物。学名のViburnum tinusがそのままカタカナ表記されている。別名がトキワ(常磐)ガマズミ、ビバーナム・ティヌスで、スイカズラ科ガマズミ属。どうも別名の方が落ち着く。原産は地中海沿岸で、日本に…

知識、情報、そして文脈(3)

3選択と確率・統計 情報は知識と違って科学的な探求、そして日常生活に不可欠な概念ということになっている。情報は知識より使い勝手がよい概念と思われ、20世紀中葉には様々な場面で使われ、寵児となった。一般的に情報概念が優れているのは、「情報量」と…

シナアブラギリの実

シナアブラギリ(支那油桐)の別名はオオアブラギリで、トウダイグサ科アブラギリ属の落葉高木。中国原産で、アブラギリほど多くはなく、野生化している。高さは10~12m、樹皮は灰褐色でなめらか、枝は太くて無毛、はじめ緑色で、のちに暗褐色になる。 果実…