2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

秋(6):ユズ

西条は「新井の在」という表現が妙に子供の私の耳に残っている。在の西条の親戚の家に大きな柚子の木があり、沢山の柚子がなっていた。それはとても珍しい光景で、今でもぼんやり憶えている。在の農家は新井の街中の家とは違っていて、それも脳裏に刻み込ま…

アリストテレスの自然:アリストテレスの四原因

[世界には四つの原因がある] 論証の前提と現象の原因とは無関係の事柄である。論証は心的な働きであるが、因果的経緯は心の外、つまり物理世界での現象の生起パターンのことである。前提と帰結、原因と結果、これら二つはとてもよく似ているが、実際は似て…

秋(5):コブシの実

早春のコブシの白い花は凛として美しい。だが、その実となると不定形で醜い。コブシという樹木そのものがなかなかの存在感をもつのだが、私にはこの花と実の落差がコブシにさらに独特の顔貌を与えていると思えてならない。 袋果という袋の中に入った実は、緑…

スーパータスク(Supertask)

SFに登場するような大袈裟な名称のスーパータスクとは、「有限の時間間隔の中で無限の操作を行う課題」を指している。私たちは有限時間内で有限数の操作しか実行できない。それが普通の人間的なタスクであるのに対して、無限の操作をするという意味でスーパ…

秋(4):コスモス

秋の青空に映えるのがコスモス。コスモスは秋の青空にピッタリ。だから、コスモスは「秋桜」と書かれ、夏から秋に咲く花かと思いきや、別名がオオハルシャギク(大春車菊、大波斯菊)で最近は既に初夏から咲いている。「ハルシャギク」の由来は波斯(ペルシ…

フレーゲの新しい論理的世界

[アリストテレスからフレーゲへ] アリストテレスの命題の基本型は自然言語の文の形に基づいていた。彼は二つの名辞が文を構成すると考えたが、文は主語と述語からなると考えたのがフレーゲである。文法上、一つの文に主語は一つしかない。その一つの主語に…

秋(3):パンパスグラス

シロガネヨシが和名のパンパスグラスは、イネ科の多年生植物。高さ2-3mと大きく成長し、細長い葉が根元から密生して伸びる。8月から10月にかけ、長さ50-70cmの羽毛のような花穂をつける。ススキに似ていて背が高いため「お化けススキ」とも呼ばれる。 パン…

観念とそれらの結合による思考の数学

[アリストテレス以後の展開] 存在の基本的な規則が論理学だった古代・中世の時代から17世紀に入ると、「思考する」、「推論する」ことがどのようなシステムをもつかについての新しい試みが幾つも登場し始める。17世紀からの新しい関心は次のように表現でき…

秋(2):ヤマボウシの実

ヤマボウシの花は、花びらのように見える白い4枚の総苞(そうほう)が美しく、その素朴で凛々しい姿を好きな人がたくさんいます。そのためか、ハナミズキと並んでよく公園で目にします。ヤマボウシは日本原産で、ハナミズキは外来種。明治45年に東京市長がワ…

量と質の表現

量と質は異なるもので、量は数学的に表現でき、質は直接に感じとられるものというような区別が受け入れられてきたようである(では、「質量」とは何なのか)。量とは数によって表すことができるもので、身長や体重、国土や都市の広さ、山の高さ等様々な量が…

秋(1):キカラスウリ

東京の湾岸部は埋立地である。そんなところの自然など貧弱に決まっている、というのが通り相場の意見だが、そんな常識が通用しないのが自然の不思議なところ。埋立地の湾岸地域を侮ることなかれで、意外に豊かな自然が既に造成されている。カラスウリについ…

アリストテレスの推論についての理論:三段論法(Syllogism)

アリストテレスは桁外れの天才、それも万能の天才である。そんな天才でも先生のプラトンや生徒のアレキサンダー大王とは色々と確執があったようである。天才の業績の一つが論理学であり、何とそれは20世紀初頭まで世界中の大学で「形式論理学(formal logic…

ハツユキソウ

北海道には既に初霜があったらしいが、ハツユキソウ(初雪草)とは何ともロマンティックな名前である。確かにこの命名は、画像を見れば的を得ていると感じ入るのだが、夏に初雪とはTPOを心得ていないようでもある。 ハツユキソウはトウダイグサ科の一年草。…

自らを犠牲にするのは生物にとって不利なことなのか

動物は自分自身に益のある行動をする。それが普通である。だから、自分を犠牲にして他人を救うような行動をするのは人間の動物的でない特別な行動だと思われてきた。というのも、どんな動物も利己的で、自分の生存を何より優先すると考えられてきたからであ…

エビヅル(蝦蔓)

ブドウ科のエビヅルは、蔓性で落葉する。古名は「エビカズラ」(葡萄蔓)。各地の野原や低い里山の林で普通に見かける植物で、秋にはブドウと同じで少し小さい果実の房をつける。果実は熟すと甘くなり、生で食べられ、果実酒にできる。 日本に今のブドウが渡…

ゼノンのパラドクス:子供の立場と大人の立場

ゼノンのパラドクスは頓智のようなものだと真剣に受け取られることが少ないのですが、世界の中の変化をどのように理解し、表現するかという基本的で目立たない土台についての問題を明らかにしてくれたという点で、第一級の重大な頓智なのです。ギリシャから…

観るトウガラシ

最近はトウガラシがよく話題になる。内藤唐辛子について既に触れたが、それは食用としての唐辛子だった。だが、その横に植えられていたのが「ブラックパール」という観賞用の園芸種で、2006年のオールアメリカセレクションズ(全米草花品種審査協会)で、金…

魔法の「ならば」:「論理的」な「ならば」、「因果的」な「ならば」

私たちは前回、神の存在証明から数学的な無限に話を転じたのですが、自然哲学と結びついた形而上学にはどのような問題があるのでしょうか。それら問題は物理学の基礎に結びついたものが多いと述べましたが、そのような代表的な項目を列挙すれば次のようなも…

ヨウシュヤマゴボウ

ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡)とは何とも野暮な名前である。ヤマゴボウ科の多年草で、別名はアメリカヤマゴボウ。ヨウシュ(洋種)とは読んで字のごとくで、北米原産の帰化植物、日本に入ってきたのは明治元年。ヤマゴボウ(山牛蒡)は我が国に古くから…

神の存在証明(2)

トマス・アクィナスはアリストテレス哲学を土台にキリスト教神学をつくりだした主要な一人で、彼は神の存在証明を5通り(「5つの道」と呼ばれる)示しました。それは既に述べた通りですが、その最初の証明である運動からの証明を詳しく見てみましょう。つい…

内藤とうがらし

真っ赤なトウガラシが眼に飛び込んできた。赤色は強烈なのだと叫んでいるかのようである。赤と緑のコントラストも眼には辛い刺激になって、感覚知覚を覚醒させてくれる。 内藤とうがらしとは、江戸周辺で栽培されていたトウガラシ。江戸東京野菜の一つ。内藤…

神の存在証明

「神の存在証明」という謂い回しはその実像を覆い隠すに十分で、その呼び名の正しい表現は「神の存在仮説」の説明だというのが私の考えです。経験主義的な立場からは、実在することが証明できない存在は仮説に過ぎません。これまでの神の存在証明と呼ばれる…

ケイトウ

一般的にケイトウと呼ばれるものは、炎のような鮮やかな花色で秋の花壇を彩り、古くから親しまれている馴染のある花で、私も子供の頃からよく目にしてきました。ニワトリのトサカに似ていることから「鶏頭」と呼ばれ、花房の先端が平たく帯状や扇状に大きく…

「嘘しかつかない」ことを巡って

真理を考える際に出てくる基本概念の一つが「真、偽(true, false)」です。真、偽とは言明の真偽のこと、つまり「ある文が真である、偽である」ことです。では、真でも偽でもない、いわば中間の真理値をもつ言明はあるのでしょうか。真とも偽とも判定できな…

サルスベリの花と実

風の強い湾岸部には風に強いサルスベリの街路樹が目立つ。古い樹皮が剥がれ、木の幹がつるつるになり、猿も滑って落ちる、というのが名前の由来。また、花期が長く6月から9月にかけ、100日ほど咲いていることからヒャクジツコウ(百日紅)とも呼ばれる。だか…

「嘘しか言わない」人はいるのだろうか?

(9月4日の「懐疑と不信」の展開) 嘘しか言わない狼少年が「今自分が言っていることは嘘だ」と自己言及(self reference)したとき、それは嘘なのか、と問われたら、どう答えたらいいのでしょうか。狼少年自身が自分は嘘つきだと表明していて、その嘘が嘘だ…

アマリリス

アマリリスは20㎝近い花径のある鮮やかな色の花を、まっすぐ立ち上がる太い茎に咲かせます。アマリリスはヒガンバナ科の植物の総称で、原産は中南米・西インド諸島で、多くの園芸品種がつくられています。地中に鱗茎をつくる多年草で、その花は初夏にユリに…

ユークリッド幾何学から非ユークリッド幾何学へ

[ユークリッド幾何学] 幾何学にはユークリッド的、公理的、線形代数的、射影幾何学的な研究がある。中でも伝統的なユークリッド幾何学は直定規とコンパスによって描くことができる(構成可能な、作図可能な)幾何学的図形を対象にしてきた。そして、作図に…

アザミとアゲラタム

アザミとなれば、想い出されるのは「あざみの歌」で、「山には山の愁いあり 海には海のかなしみや ましてこころの花園に 咲きしあざみの花ならば」と口遊んでしまう。アザミの仲間で最も多く見られるのはノアザミで、日当たりのよい草原や道端に生えている。…

懐疑と不信:知識と倫理

嘘しか言わない狼少年が「今自分が言っていることは嘘だ」と自己言及(self reference)したとき、それは嘘なのか、と問われたら、どう答えたらいいのでしょうか。狼少年自身が自分は嘘つきだと表明していて、嘘が嘘だということですから、自分の言っている…