2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

生命の変化(6)

6選択の単位 生命現象の様々なレベルにおいて選択が働くということ自体に問題はない。有機体に選択が働き、それが有機体を含む集団に、そして有機体を構成する細胞に、さらには細胞内の遺伝子に働くというのは自然に見える。これが選択に関する階層的見解で…

ホルトノキ

湾岸の自然は計画され、つくれた自然である。そのためか、ホルトノキが妙に多い。自己主張がほどほどの誰にも嫌われない樹のためかというのが私の感想だったが、それにしても不思議な名前だとずっと気になっていた。平賀源内がこの木をオリーブと間違え、「…

生命の変化(5)

5 適応度 集団が遺伝可能な適応度(fitness)の違いをもつなら、それは自然選択によって進化する。生存と生殖における「有利さ」を形式化した適応度は自然選択のモデルを考える上で極めて重要な概念である。この適応度は正確にどのようなことを意味している…

藍藻(シアノバクテリア):光合成と共生

陸上の植物は5億年もの歴史があるのですが、水中に棲む藻類はなんとそれよりずっと長い30億年もの歴史があり、その途方もなく長い歴史の中で「共生」が今の多様性を生み出すことになりました。30億年も前に「光合成」をスタートさせ、酸素を作り出し、原始大…

生命の変化(4)

(定義) (遺伝子によって表現される)ある形質に関して、集団が下の条件を満たすが場合、その集団はハーディ-ワインバーグ均衡にある。 1集団のサイズは無限である。(実際に無限の集団はないので、通常は極めて大きな集団と仮定される。)2集団間に移住…

湾岸の夏

連休は良く晴れたが、実に暑い。暑さを除けば平穏なのだから文句など言ってはいけないと思いながらも、温暖化を恨めしく思うのは私だけではないだろう。折角だから、この暑さの中で温暖化や地球環境について考えてみるのも悪くはないだろう。 見渡せば夏の植…

生命の変化(3)

4進化の過程とその原因:選択と浮動 私たちは既に進化を事実として認めるという、ただそれだけのために多大な努力が払われてきたことを述べてきた。だが、進化が自然の変化のレパートリーの一つに加えられ、事実としての進化が定着するだけでは進化の謎は解…

アベリア

アベリアは、公園や道路沿いに数多く植栽されていて、勝手ながら少々食傷気味の植物です。花が美しいのはもちろん、斑入りなど、葉の観賞価値の高い園芸品種と見做されていて、正に園芸品種の優等生といったところです。 アベリアは、19世紀中期にイタリアで…

ハマゴウ(2)

二枚の画像のハマゴウの葉をまず見ていただきたい。とても健康だとは言えない。フシダニによってハマゴウハフクレフシという虫えい(虫こぶ)ができている状態である。それを調べていくと、見つかったのが直江津中学校科学部の研究「ハマゴウ虫えい(虫こぶ…

生命の変化(2)

情報とDNA分子 以下のような文を見て気づくことを挙げてみよと言われたら、何を挙げるだろうか。また、各文に現われる情報に関連した用語を使わずに、同じ内容を表現できるだろうか。 遺伝するのは親から子へ物理的に引き継がれるDNA分子である。DNAは身体の…

ハマゴウ(1)

草のように見えるが、本当は木である。名前は「浜をはう」という意味らしい。葉を風呂に入れるといい香りがする。平安時代の文献『延喜式』、『本草和名』では蔓荊子(はまはふ)、波万波比(はまはひ)などと呼ばれ、茎が砂の上を這うので「浜這い」だった…

生命の変化(1)

‘Nothing in biology makes sense except in the light of evolution’.T. Dobzhansky(1973) 物理学が20世紀前半に大きく進展したのに対し、20世紀後半に著しい発展を遂げたのは生物学である。それに伴い現在では生物学の哲学も物理学の哲学と肩を並べる分…

ヘクソカズラ(屁糞葛)

生物名の表示がカタカナではなく、漢字だったとすれば、とんでもないことになるのがヘクソカズラ。言葉の暴力という曖昧な表現をよく聞くが、これは正に漢字の暴力である。ヘクソカズラは昔からとても臭いということになっていて、それゆえ最悪の名前を与え…

変化の経験-科学における経験と実在(8)

知覚、気づき、そして内観経験が科学に対してもつ重要な役割がいままでの叙述から明瞭になったとは到底言えない。そこで、私たちが日常生活、科学研究を問わずに行っている知覚経験を取り上げ、知覚経験とはどのようなものかを分析してみよう。例えば、「リ…

榊(サカキ)

私の住んでいた新井の町では毎月6と10のつく日と晦日に市(いち)が立っていた。子供の私には沢山の農産物が通りの両側に並んでいた記憶しかない。市が立つ度に農産物を運ぶ人たちの通り道になっていた北国街道に面した我が家では、わざわざ市に行かずとも、…

変化の経験-科学における経験と実在(7)

6実在論再訪 私たちは実在論を擁護する二つの論証を既に述べた。ここでは科学的実在論(scientific realism)から眺めた場合の議論を取り上げてみよう。科学的実在論は「科学的知識の対象は科学者の心や行為から独立して存在し、科学理論は客観的世界につい…

夏模様あるいは環境破壊の結果

西日本の大雨が過ぎ、大きな被害と共に今年の夏がスタートした。これから暫く暑い日が続くと思うと、地球温暖化をもたらした私たち自身を恨むしかないのだが、地獄の炎を想像すると地球の未来は暗澹たるものである。 子供にとっては夏(と冬)は記憶に残る季…

変化の経験-科学における経験と実在(6)

5意味と観察の問題(経験論者にとってなぜ観察は重要なのか) 経験論は世界についての知識は経験や観察によってのみ獲得できると主張する。私たちが既に見てきたように、この主張が観察でわかるものを超えるように見える知識を疑うという結果をもたらしてき…

アオイ科の花々

アオイ科はアオイ目の科のひとつで、従来の分類では約75属、1500種からなる。夏に美しい花をつけるものが多く、観賞用のハイビスカス、ムクゲ、フヨウ、タチアオイなどのほか、食用のオクラ、またワタなど繊維として利用されるものもあり、その用途はとても…

煙霞(=烟霞)痼疾あるいは妙高痼疾(修正版)

「煙霞」はもやや霞のことで、自然の景色を指し、「痼疾」は治ることなく長い期間患っている病、持病のこと。自然を愛でる強い気持ちを病にたとえたのが煙霞痼疾。となれば、妙高を強く愛でるのが妙高痼疾。煙霞痼疾は「深く山水を愛して執着し、旅を好む性…

煙霞(=烟霞)痼疾あるいは妙高痼疾

煙霞痼疾とは自然を愛でる気持ちが非常に強いこと、または、隠居して自然と親しみながら生活することである。「煙霞」はもやや霞のことから、自然の景色のことで、「痼疾」は治ることなく長い期間患っている病、持病。自然を愛でる強い気持ちを病にたとえた…

変化の経験-科学における経験と実在(5)

4反実在論再考 科学についての反実在論者にとって重要な問題は、理論言語と観察言語の区別があるかどうかではなく、観察できるものと観察できないものの間に適切な区別があるかどうかであるとしばしば言われる。問題は事物についてであって、言語についてで…

白い花の百日紅

サルスベリ(百日紅)はヒャクジツコウの名の通り、初夏から秋までの長い間鮮やかな花を咲かせる花木。樹皮が白くなめらかな手触りをしていることが百日紅の特徴で、それを好きな人が多い。花びらの縮れた小さな花がまとまって穂のように咲き、夏から秋まで…

変化の経験-科学における経験と実在(4)

2反実在論の諸見解 ここでは科学理論の構造に関する経験論を含む反実在論の見解を詳しく見てみよう。反実在論の特徴は理論と観察を明瞭に区別するという点にある。( 問題の起源:「理論」の始まり) ガリレオとロックの第一性質と第二性質の区別を思い出そ…

コブシの実

コブシの樹も花も申し分のない風情なのだが、何とも形容しがたく、不規則なアモルファスのような姿をしているのがその実。それがとても対照的で、コブシに独特の存在感を与えている。私には均整の取れた、優等生のコブシがなぜあんな不定の形の実をつけるの…

変化の経験-科学における経験と実在(3)

(意味の問題) ここまでの歴史的な説明では経験論が形而上学に対して与える制約は知識の問題であった。経験論の主張を文字通りに考えるなら、観察可能なものを超えて実在について述べようとすると、それは正当化できない、それゆえ、形而上学の目標は達成で…

オトコエシ

オミナエシは細長い茎をもち、花が風にそよぐ様子はいかにも女性的で、女郎花(オミナエシ)の名にふさわしい花だと思いたいのだが、私にはどうしても芭蕉と同意見をもてないのである。オミナエシを詠った和歌は万葉集に14首、その後の古今和歌集にも17首あ…

「住みよさランキング2018」の結果をどう使うか?

25回目の発表となる「住みよさランキング」は、公的統計を使って、それぞれの市区が持つ都市力を、「安心度」、「利便度」、「快適度」、「富裕度」、「住居水準充実度」の5つの項目に分類し、16の統計指標を使って算出したもの。指標ごとに、平均値を50とする…

変化の経験-科学における経験と実在(2)

1経験論と実在論 まず経験論と呼ばれてきた考えがどのようなものかを歴史的な経緯を通じて考えてみよう。特に、経験論の中で表象がどのように扱われているかに注意しながら議論を進めてみたい。[経験論とは何か] デカルトのように心と外の世界を二つに分け…

オミナエシ(女郎花)

漢字の名前を見ると、今ならさしずめ差別用語として非難されかねない名前である。だが、伝統が人権を牛耳って、この名前は市民権を得たままのようである。秋の七草の一つだが、今年は既に咲いている。黄色い清楚な5弁花で、山野に生える。「おみな」は「女…