チリアヤメの花

 チリアヤメは南米原産の多年草。チリアヤメの「チリ」はその原産国の一つ。背丈が低くコンパクトなサイズなので、一般家庭でも栽培は楽なのだが、これを駆除するとなると面倒なことになる。実際、原産地ではしつこい雑草らしい。昨年チリアヤメを見つけた道端とほぼ同じ場所に今年も見ることができた(画像)。

 チリアヤメは芝生の中などに散らばるように可憐な花を咲かせ、鮮やかな濃いブルーの色がよく目立つ。花は朝開いて夕方にはしぼむ一日花だが、次々と咲き続ける。草姿が小さい割に花は大きく、花径は3cmくらい、3枚の丸みのある花弁が広がる。中心部には濃淡の模様が入り、3枚の小さな花弁(内花被)がある。

 日本へは大正4~5年に入ったといわれ、関東地方以西の平野部ではよく野生化している(画像は有明で野生化しているもの)。

*午後になると花弁が先端から捲れ、しぼみ出す(画像)。

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ゼニアオイ(銭葵)の花

 ゼニアオイはアオイ科ゼニアオイ属の多年草。ヨーロッパ原産で、 江戸時代に渡来し、観賞用に広く植えられ、野生化しているものも多い。ハーブとして広く栽培され、乾燥した花で入れたハーブティーは美しいブルーを発色し、レモンを加えるとピンクに染まる。中国を経て、渡来した園芸種。

 全体にほぼ無毛で、高さは60〜90cm。花は淡紫色で濃紫色のすじがある(画像)。よく似た花にウスベニアオイがあるが、見分けが難しく、ゼニアオイは茎が一般的に無毛で、葉が大きくほぼ円形で切れ込みが浅い。ウスベニアオイは茎にまばらに長毛がある。

 

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ニワゼキショウ(庭石菖)の花

 アヤメ科ニワゼキショウ属のニワゼキショウはとても小さい。芝生や草地などに群生し、花期は5月から6月。今あちこちで咲いている。直径5₋6mm程度の小さな花で、近眼の私にはしゃがんで地面に顔を近づけなければならないし、近づきすぎると老眼でぼやけてしまう。何とも情けないのだが、自分の年齢を気づかせてくれる。花弁は6枚、花色は白と赤紫(画像)。遺伝的には白が優性、赤紫が劣性。中央部はどちらの花色も黄色。受精すると、花は一日でしぼむ。

 日本に普通みられるものは、テキサスを中心に分布する多型的な種である。明治時代に観賞用として輸入された。野生化したのではなく、本来雑草だったものが帰化したもの。ニワゼキショウサトイモ科のセキショウ(石菖)に葉が似ていることからその名がつけられたらしいが、もちろんセキショウとは違う種である。

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センダンの花

 「栴檀は双葉より芳し(せんだんはふたばよりかんばし)」とは、「大成する人は小さいときから優れている」という諺。この「栴檀」は中国では「白檀(ビャクダン)」のことで、まだ芽が出たばかりの双葉の頃から、とても良い香りを放つ木として有名です。

 東京メトロ有楽町線豊洲駅から豊洲新市場に向けて歩いていくと、歩道の木に花が咲いています。その木々がセンダン(栴檀)で、センダン科センダン属の落葉高木。別名はオウチ(楝)、アミノキなどで、ビャクダンではありません。センダンの樹高は15mにもなり、成長が早く、若い樹皮は紫褐色で楕円形の小さな横斑が点在しますが、太い幹の樹皮は縦に裂け、凹凸ができます。秋に楕円形の実が枝一面につき、落葉後も木に残る姿が数珠のようであることから「センダマ」(千珠)の意味で命名されました。

 植物のセンダンはビャクダン(白檀)とは違う植物で、残念ながら双葉より芳しくはありません。センダンは熱帯域に広く原生します。花は変わっていて、5枚の花弁を持ち、10本の雄蕊が合着して紫色の筒になっています。筒の先に葯(やく)があり、白い花粉が見えます(画像)。

 昔のセンダンの呼び名は楝(おうち)で、それが色名になっています。淡く、やや青みがかった紫色です。藤色よりは濃く、深みを加えたような、青みの爽やかな紫色です。

 センダンはビャクダンのように芳しくなくても、センダンの花の香りは、とても甘く、高貴な香りです。センダンの花の香りは、バニラやチョコレートの香りに似ています。木としてはビャクダンのような香りはありませんが、花は香しいのです。

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ニオイバンマツリ、ハコネウツギ、そしてスイカズラの花たち

 ニオイバンマツリ(匂蕃茉莉)は、ナス科の常緑樹で、南アフリカ原産。5月に入り、花が咲き出しました。漏斗状の花弁で5弁に開きます。花は咲き始めが濃い紫色で、次に薄い紫色、最後は白色に変わり、強い芳香があります。和名の匂蕃茉莉は、匂(香り)があり、蕃(外国)からの、茉莉(ジャスミン類)の意味。ニオイバンマツリの最大の特徴は、花の色が初めは濃い紫ですがやがて白に変わっていくところ。紫と白の色合いはとても上品で、数十メートル先までニオイバンマツリの香りが漂います。香りは、昼間より夜間のほうが強くなります。

 ハコネウツギ(箱根空木)はスイカズラ科の植物で、花期は5〜6月頃で漏斗状の花を咲かせます。こちらもあちこちで花をつけています。ハコネウツギの花は白が次第に赤へと変化していきます。つぼみのときは白ですが、次第に赤色に変わっていきます。

 同じスイカズラ科のスイカズラも咲き出しました。スイカズラは山地に生育する半落葉ツル性木本で、花期はやはり5~6月です。別名は「キンギンカ(金銀花)」ですが、初め白色の花がだんだんと黄色くなるので、金色と銀色の花が混じって咲くように見えることから命名されました。また、冬にも葉が落ちないことから、忍冬(ニンドウ)とも呼ばれます。

 ニオイバンマツリ、ハコネウツギスイカズラも二色の花が咲いているように見えながら、実はそうではなく、花の色がある色から別の色へと変わっていたのです。これは時間をかけて観察を続けないとわからないことで、感覚が信用できないのではなく、時間を置いた観察を続け、その時々の感覚を信用することによって手に入れることができる知識です。それがわかれば、「どうして一つの木に色の違う花が咲くのか」という疑問への「源平咲き」といった答えはこれら三種には誤りで、「どうして花の色は時間の経過とともに変わるのか」という問いが適切だということになります。

 ハコネウツギスイカズラは何度も見ていたので、花の色が変わると直感していたのですが、白から赤か、あるいはその反対かは気にしませんでした。ニオイバンマツリに至っては当初源平咲きの例かと盲信していました。素人の恐いところです。

 「感覚が信用できない」、「感覚が信用できる」はどのように私たちが感覚を使うか次第で、それこそが感覚の両面であり、知識と感覚の結びつき方に依存しているのです。

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ニオイバンマツリ

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ニオイバンマツリ

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ニオイバンマツリ

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ニオイバンマツリ

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ニオイバンマツリ

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ハコネウツギ

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ハコネウツギ

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スイカズラ

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スイカズラ

 

ヤセウツボの枯れ姿

 今の道端や野原は草花に溢れているが、そんな満面の緑の中に枯れたとしか思えない姿が見える。枯れて見えるのは葉緑素がないからで、その理由は他の植物に寄生しているため。それがヤセウツボ(痩靫)で、ハマウツボ科ハマウツボ属の寄生植物。地中海沿岸が原産で、日本には外来種として定着している。

 葉緑素をもたないため全体的に褐色で、15-50cmほどの高さまで生長する。4-6月に12mm程度の大きさの唇形花を咲かせる。花には色があり、淡黄色で紫色のスジがある(画像)。寄生植物であるために、葉は鱗片状に退化していて、植物体に葉緑素はなく、褐色の腺毛が密生している。寄生主にはマメ科、セリ科、キク科などがあり、寄生根で養分を吸収している。野原のシロツメクサアカツメクサによく寄生する(画像)。

 「ヤセウツボ」の由来は同じ属のハマウツボよりも細い見た目をしているためで、その「ハマウツボ」の由来は花の形が矢を入れる靭(うつぼ)に似ているため(魚のウツボではない。これはウツボカズラウツボグサも同様)。ヤセウツボマメ科牧草の根に寄生する「侵入種」で、国立環境研究所のホームページでも紹介されている。一方、ハマウツボ環境省レッドリストには載っていないが、北海道、福島県高知県で絶滅種あるいは絶滅危惧種に指定されている。

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ハッサクの花

 ハッサクは誰もがその味を知る日本原産のミカン科の柑橘類。「八朔」とは8月1日のことで、万延元年因島浄土寺の恵徳上人が発見した。因島には古くから多くの種類の雑柑があった。東南アジアまで勢力を広げ活躍した村上水軍が、遠征先から苗木や果実を持ち帰ったのかも知れない。ハッサクは誰かが食べ捨てた果実の種から発芽したと言われているが、詳細は不明。

 ハッサクという名前がついたのは、当時ハッサクが陰暦の8月1日頃から食べられていたことに由来するらしい。現在の旬の時期とはかなり違っている。当時人々の間で流行っていた柑橘類は「夏みかん」だった。ハッサクがようやく一般に出回るようになったのは戦後のこと。

 果肉は歯ごたえがあり、適度な甘さと酸味を持ち、少し苦味もある。最近は高糖度の甘い柑橘がもてはやされるが、ハッサクはそれらとは一線を画している。美味しく食べられる旬は2月から3月。

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