空色のサルビア

 ソライロアサガオが夏の空色とすれば、秋の空色はサルビア・アズレアだろう。サルビア・アズレアの方が紫に近い青。伝統色の名称だと、み空色、薄花色がソライロアサガオなら、サルビア・アズレアは青藤色といったところか。

 サルビア・アズレア(Salvia azurea, Blue sage)はアメリカ南東部原産で、夏から秋にかけて淡い青色(空色)の花を咲かせる。東京では晩夏から咲き始める。サルビアの中では開花が遅い品種で、背丈が高くなる。アズレアは空色(azurea)で、透明感のある空色。

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ハナセンナの花と葉

 ハナセンナはブラジル、アルゼンチンが原産で、マメ科センナ属の常緑低木。寒冷地では冬に落葉するか、枯れる。画像の花を見るとマメ科であることがわかるだろう。葉は互生する長さ3~5.5cmの偶数羽状複葉(画像)。奇数羽状複葉のものは多いが、偶数羽状複葉はネム、サイカチ、そしてこのセンナ類ぐらい。

 葉腋や茎先に長さ4cmほどの総状花序を出し、秋に4~10個の花をつける。花は鮮やかな黄色の5弁花で、花弁は長さ1.5cmでまるく、雄しべが10本ある(画像)。
 別名はアンデスノオトメ(アンデスの乙女)。昭和初期に渡来し、暖地で観賞用に植えられている。黄色い印象的な花の花期は9-10月頃。

*単葉、複葉

 一片の葉で構成される葉が単葉。「葉っぱ」は大抵この単葉のこと。また、複数の小葉で構成される葉が複葉。複葉はさらに小葉のつき方や数により、小葉が鳥の羽のようについているものを羽状複葉、小葉が奇数のものを奇数羽状複葉、小葉が偶数のものを偶数羽状複葉。複葉の小葉がさらに複葉になっていると、2回奇(偶)数羽状複葉、小葉がさらに複葉になっていると,3回奇(偶)数羽状複葉。葉のつき方の規則的、幾何学的な構成が見て取れる。

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ウラナミシジミの交尾

 植物の受粉や昆虫の交尾は哺乳動物の交尾に比べると卑猥な感じがもたれないのが普通である。とはいえ、受粉や交尾は両性生物によって種の保存に不可欠の装置であり、それはどんな両性生物も変わらない。それに対する倫理的な配慮や感情は人間だけに特有なものと考えられている。だが、それほど単純に割り切れるものではなく、哺乳類となれば、人間の間の性行動に類似した行動が多くなり、性的な衝動を数多く観察できる。

 9月末から目立つのが小型のシジミチョウと、その交尾。今でもあちこちで割と簡単に遭遇できる。翅裏が茶色と白の縞模様なのがウラナミシジミで、温暖地で越冬して、毎年、夏から秋にかけて北上する。雄の翅表は「藍紫色」で、雌の翅表は褐色で、中心部だけ藍紫色。画像はクサギの葉の上で交尾するウラナミシジミ。あなたなら、ウラナミシジミの他の行動を見るのと比べ、交尾をどんな感情で見るだろうか。

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タマスダレの白い花

 白い花を咲かせるタマスダレ(玉簾、Zephyranthes candida)とピンク色の花のサフランモドキZ. grandiflora)はゼフィランサスと呼ばれ、人気が高い。南米が原産で、日本には明治初期に入った。特に、タマスダレは耐寒性もあり丈夫で、日本の風土に適応し、あちこちで半野生化し、湾岸地域でも群落が見られる。花が少なくなるこの時期、白いタマスダレが目立つ。

 タマスダレヒガンバナ科で、全草が有毒、特に鱗茎に毒成分が多い。和名の由来は、白い小さな花を玉に、葉が集まっている様子を簾に例えたことから。葉は濃い緑色で、土から直接出ていて、花の白とのコントラストが美しい。夏から秋に咲く白い花は1本の花茎に対して、1つだけである。

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ウミネコの幼鳥

 久し振りに有明西埠頭を歩くと、大きな海鳥が見える。警戒心が薄いのか、近づいても逃げる気配がなく、ゆっくり動くだけ。素人の私に咄嗟に思い浮んだのが「ユリカモメ」。なにしろ、すぐ近くに「ゆりかもめ」の車両基地があり、その上、ユリカモメは東京都の鳥なのである。慎重に画像の鳥が何かを見極めようとすると、これが意外に厄介なのだが、それもまたなかなか楽しい。ユリカモメとよく似ているのがウミネコ

 カモメはカモメ科カモメ属の鳥で、夏季はカナダ、アラスカなどに幅広く生息、冬季に日本周辺や中国東部、朝鮮半島などで越冬。日本には、冬鳥として全国に飛来し、春夏には繁殖のため再び日本を離れる渡り鳥。海岸、河口、干潟などの沿岸部に棲息し、雑食性。体長は45cmほどで、くちばしは黄色一色で、鳴き声はカラスに似ている。

 ウミネコも、カモメと同じカモメ属の鳥。日本の沿岸に通年棲息する留鳥。カモメと同様、雑食性。繁殖地が日本とその近海に限られるため、集団繁殖地の多くは国の天然記念物に指定されている。ウミネコはカモメより少し大きめ。鳴き声が「ミャーミャー」とネコに似ていることが名前の由来で、漢字では「海猫」。

 さて、私が見た緩慢な鳥は海鳥の幼鳥らしい。幼鳥で動きがゆっくりだったのだろう。カモメとウミネコはよく似ているが、一番の違いはカモメが冬の渡り鳥であるのに対して、ウミネコ留鳥で、1年中姿を見ることができる。ユリカモメのヒナは営巣地の、例えばカムチャッカにはいるだろうが、日本にはいない筈である。画像は幼羽から第1回の冬羽に変わろうとしている姿と思われる。ウミネコの雛は孵化してから約40日で巣立つ。画像は幼羽から第1回の冬羽に変わろうとしている姿と思われる。ウミネコは生後3年ほどかけて成鳥になる。

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秋色のシシユズとシセントキワガキ

 近くの公園のシシユズの実が色づき始めた。今年は10個近くの実がなり、眼に入ってくるようなシシユズの瘤だらけの塊は秋を感じさせてくれる。

 シシユズ(獅子柚子、別名はオニユズ)はユズの仲間ではなく、ブンタンの仲間。そのため、ユズのような強い香りは無く、ほのかに柑橘類の香りがする。中国が原産で奈良時代に日本に入ってきた。とても大きな実で、直径が20㎝前後にもなる。皮が非常に厚く、表面が滑らかではなく、凹凸が激しい(画像)。シシユズは他の柑橘類のように果肉を楽しむ果物ではない。果肉だけを食べると甘味が少なく、酸味も少ない。

 シシユズの近くに2mほどのシセントキワガキ (四川常盤柿)があり、やはり実が赤くなり出している。このカキはカキの仲間では珍しく常緑樹で、葉は細幅の長楕円形。緑の葉の中の秋色が美しい。その実は直径約2-3㎝ほどと小さく、長い果柄の先につき垂れる。10月頃から柿色に色づき始め、長く枝に残る。

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ベニシタン、あるいはコトネアスター

 コトネアスターはベニシタン(Cotoneaster horizontalis)の別名として使われるが、今ではシャリントウ属の総称として使われる場合が多い。例えば、盆栽界ではベニシタン(紅紫檀)やシロシタン(白紫檀)が定番だったが、新たな品種が増え、まとめてコトネアスターと呼ぶようになってきた。

 ベニシタンは、中国西部山岳地帯原産で、バラ科シャリン属の半常緑低木。暖地では常緑となり、寒地では落葉樹となる。寒さに強く、また果実(画像)や紅葉が美しく、庭園樹として人気が高い。樹高は50cm〜1mで、9月から果実が赤くなる。ベニシタンは赤色の果実と枝が横に広がる樹形で、よく栽培され、そのため、近年は果実がより美しい園芸品種が普及している。

 生物種(species)の学名と園芸種の品種名の違いはとても紛らわしく、さらに、日本語への翻訳は中国由来、ヨーロッパ由来で異なっている。ベニシタンとコトネアスターもそのような例の一つで、慎重に検討すると、言語哲学で見落としてきた事柄が必ずや幾つも見つかる筈である。例えば、自然種(Natural kind)人工物(Artifact)の違いを考察する時に、それらの命名とその経緯に関して役立つのではないか。

*画像はベニシタンの実(10-1月)と花(5月)

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