コバンソウとヒメコバンソウが群生する世界

 コバンソウ小判草)は地中海沿岸を原産とするイネ科の一年草です。明治時代に観賞用として渡来し、現在は野生化していて、道路の端や荒地・原野に生息しています。和名が示すように、まさしく小判によく似た花穂が特徴。春に柔らかくて細いみどり色の葉をだし、晩春ごろから初夏にかけて、茎の先に円錐形の花柄を出します。そして細い茎に数個ずつ、まばらに花穂をつけます。長さ1-2cm、幅1cmぐらいの大きさ。花びらは雄しべや雌しべの根元につく「りん皮」と呼ばれる小さな突起で、花びらが退化したもの。初めは緑色をしていますが、熟すると黄緑色を帯び、さらに次第に色づき、夏も遅くなる頃には、黄金色に輝きます。この時期の細い柄につり下がった姿は、まるで小判や昆虫の卵と間違われるような形で、長い柄に垂れ下がり、風に揺れる姿は風情があります。

 ヒメコバンソウもイネ科の一年性植物で、茎は直立し、無毛の細長い葉を持ちます。ヒメコバンソウの方が先に日本に来ていたようで、一説には江戸時代との記述がありますが詳細は不明。長崎の出島を通してオランダ人が持ち込んだようです。別名はスズガヤ。花は長さ5-15cmの円錐花序で、淡い緑色を帯びた5個内外の小さな花(小穂)をつけます。小穂を振ると、かすかな音をたてることからスズガヤとも呼ばれます。

 野原や道端で群生したコバンソウやヒメコバンソウに出会うと、立ち止まり、見入ってしまいます。初夏の風が小判のような穂を揺らし、音を出します。

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コバンソウ

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コバンソウ

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コバンソウ

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ヒメコバンソウ

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ヒメコバンソウ

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ヒメコバンソウ