A君とマスク

 このところ誰もがマスクをして歩き、仕事をしている。マスクが服装品の一つになったようだが、遊び回るには適していない。とはいえ、マスクをつけることがエチケットだけでなく、感染予防でもあると教えられている。そのマスクがどこにも売っておらず、それが大問題になっている。学校でみんなでつくればいいのにと思っても、その学校も休校では致し方ない。A君は母親が頑張って縫った布マスクをもたされている。

 そのマスクを見ながらのA君の夢想。マスクを求める集団にマスクが一枚もない状態から色んな仕方、分量のマスクが供給されることをA君は想像してみた。皆がマスクを求める状態から、マスクが集団に入っていくとしよう。すると、マスクをつけた人が次第に集団内に増えていくだろう。そして、終に全員にマスクが供給されてマスク騒動は落ち着く。そう考えたA君は次のようにまとめてみた。この騒動の過程の中で、人々がマスクを求める流行が暫し続くことになるのだが、その流行の強さはマスクを求める人数とマスクをつけることができた人数の関係が時間経過の中でどのように変わったかを知ることによってわかるだろう。

 そこで、A君はグラフを想像してみた。集団内でマスクのない人たち、マスクを手に入れた人たちはそれぞれ逆の変化をしていて、その変化の差はマスクを手に入れるという行為の流行の強さを示している。この流行がゆっくり穏やかな場合と強く急激な場合の違いがある。そんな風にまとめたA君は、マスクを求めるという行為の集団内での経緯や強さ、弱さがグラフで表現できることに気づいた。当然、A君はこれが新型コロナウイルスの流行、さらには感染症の流行の形態によく似ていることに気づいた。感染症に限らず、社会の中で何かが流行することが同じようなパターンをもっていて、その一例が感染症数理モデルであり、人口動態のモデルもよく似たものだと直感した。マスクの量や配布の仕方を色々変えることができるのは私たち人間であり、そのような人の操作によって流行の仕方をコントロールできる。感染症の流行を押さえることも実はこれと同じで、私たちの行動変容(接触の削減)によってコントロールできるのだと結論して、A君は一応納得した。

*グラフを実際に書いてみたい方は最近の新型コロナウイルスの解説に登場するグラフを見ていただきたい。ほぼ同じグラフでマスクの取得の変化が説明できる筈である。