世界の致死率は上昇

 話題になったPCR検査を使う目的は二つ。(1)積極的疫学調査により濃厚接触者について感染の有無を判定、隔離により感染を防ぐため (日本は最近までほぼできていて、今も継続中)、(2)症状がある人を広く検査し、隔離によって感染を防ぐため (韓国、ドイツ、そして最近の米国)。日本と韓国やドイツとの違いの優劣は流行後の分析を待つしかない。

 日本は文化的に対人距離が欧米より遠いこと、水がどこでも使え、手を洗う習慣があったことなどが日本の実効再生産数Rを1以下にし、感染拡大を防ぐことができた。クラスター対策班はクラスター感染が起こりやすい場所の条件を見つけ、クラスター発生を予防しようと考えた。それが「三密」で、クラスター潰しに活用された。日本独自の方法は3月10日頃までは功を奏し、感染者数を低く抑えることができた。

 中国からの第1弾はクラスター潰しによって何とか抑え込めた。だが、3月末に感染者が急増。これは欧米から多数の感染者が帰国し、感染拡大が起きたためと推測できる。リンクが追えない感染者が急増。その原因追求とクラスター潰しが大阪、そして東京で行われている。そんな中で考えたいのが致死率の上昇。

 コロナウイルスの致死率(死亡率)は2%程度(致死率=死亡症例数/感染症例数、WHO)で、SARSやMERSほど致命的ではない(SARS 9% 、MERS 10%)。韓国では検査数が多いので感染数が多い、中国では重症例のみに検査を行い、致死率が高い、などと言われてきた。軽症でも積極的に検査をすると死亡率(死亡数/検査陽性者数)が下がる。イギリス、スイス、ダイアモンドプリンス号、韓国などがこの傾向にある。日本は検査件数が非常に少なく、無症候や軽症は検査していないため致死率が高くなると説明されていた。

 多くの人がジョンズ・ホプキンス大学の集計(https://www.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6 )を参考にしているが、私もその一人。この集計から致死率が計算できるが、感染者数の増加とともに、世界の致死率も増加。3月10日段階で約3.5%だった世界の致死率は上昇を続け、3月28日は4.6%に上昇、29日には4.7%となった。日本の致死率も3月10日時の約1.4%から約2.9%に上昇。ドイツは0.98、韓国で1.6、そしてフランス6.7、イギリス6.2。

 致死率は死者数/感染者数というのが普通の計算法。だが、これでは感染者が治療により完治して生還するのか、あるいは死亡することになるのかは計算に入っていない。感染者の中でこれから亡くなる人の数は入っておらず、全員治癒すると仮定した場合の致死率である。決着した人(既に死んだ人と治癒した人の合計)に占める死者の比率は結構高いので、決着していない人が同じ確率で死亡するとすれば、数値は大きく変わってくる。実際、死亡した人と完治した人から、新型コロナの致死率を算出すると、非常に高い。そこでジョンズ・ホプキンス大学のデータ中の「CLOSED CASES」を見ると、生還したか死亡したか、つまり、決着した感染者の数が記載されている。そこから、死亡した人数を回復した人数で割ってみると、その致死率は、ドイツ4.1、フランス38、韓国3.0、日本13となる。

*日本の場合、退院のためには2回のPCR検査を間隔を空けて行う必要があり、回復しているのにそれが認められるためには時間がかかり、これも集計に影響している。