国ごとの対策

英政府の首席科学顧問、サー・パトリック・ヴァランスと、イングランド主任医務官のクリス・ウィッティーは現時点で厳しい行動制限を導入するのは時期尚早と判断。イギリスの対策は、感染拡大のピークを夏まで遅らせるという戦略。夏には医療機関への圧迫は減少し、感染流行のピークを分散させれば、患者の治療も管理しすくなると考え、その上、ウイルスが何年も繰り返し出現することに備え、国民に免疫をつけさせるというもの。

だが、イギリスの科学者229人が英政府にこれより強硬な措置を実施するよう公開書簡で、政府の対応を批判。国民に免疫をつけさせると発言したことはウイルスに対するレッセフェールをとっていると批判。これらはとてもイギリス的で、イギリス政府はこれを受け、他国よりは弱いが、制限を強めた新方針を16日に出した。

16日フランスのマクロン大統領も、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、翌17日正午から買い物や通勤などを除き15日間、仏全土で外出を制限するとテレビ演説。違反者は処罰。「私たちはウイルスと戦争状態にある」と語る。外出制限措置は欧州ではイタリアやスペインに次ぐ。ウイルス対策に専念するため、年金改革など全ての改革を棚上げすることも明らかにした。仏政府は12日も外出を控えるよう呼びかけたが、その後も市民は仏各地の公園で日光浴を楽しむなどしていて、マクロン大統領は16日の演説で「症状は出ていなくても、他人を危険にさらしている」と苛立っている。フランスは感染症には伝統をもち、パスツール研究所を中心に対策を立てている。

ドイツでは保健省と内務省による危機対策本部を設置。ロベルト・コッホ研究所と連絡を取り合い、専門家の助言に従って対策を立てている。様々な制約とそれに伴う経済的打撃への措置、そして国民一人一人への行動について、メルケル首相が最新のビデオポッドキャストで話し、協力を呼び掛けている。とても丁寧で、落ち着いた説明であり、批判やイラつきはどこにもない。慌てるアメリカとは好対照である。

さて、我が国は北里柴三郎から始まる国立感染症研究所中心の専門家会議と政府とが対策を講じてきた。それぞれの国の気質が対策にも影を落としていて、グローバル化EUの影が薄くなって、「国」というまとまりが強く表面に出ているのは何とも皮肉なことだが、科学や経済以外ではやはり国が単位になっていることを思い知らされる。国の統制が最も強いのが中国。そして、今のところ影が薄いのがWHO。