小さな野生(1)

 野原の雑草の多くは春に小さな花をつける。そんな花には老眼泣かせのものが多い。それを2回に分けて眺めてみたい。既にアメリカフウロ、コメツブツメグサ、キュウリグサヒメオドリコソウなど、とても小さい花をつける野生の花々を紹介したが、どの名前も園芸種の洒落た、横文字擬きの名前と違って、風情というより生活の匂いのようなものを感じるのである。

 最初は、タチイヌノフグリ。既にオオイヌノフグリ、コゴメイヌノフグリ、フラサバソウを紹介した。「犬のふぐり(睾)」という名前からして度肝を抜くが、それが様々に変容して「ふぐり族」を形成している。私の周りの空き地や公園にはオオイヌノフグリが目につくが、かがんでよくよく見つめれば、他のふぐり族も目に飛び込んでくる。タチイヌノフグリの花はオオイヌノフグリの花よりさらに小さく2、3㎜ほどしかない。そのため、人が立った目線からでは花の存在には気がつかない。名前の由来は屈まないと見えないのとは裏腹に、「立ち上がるイヌノフグリ」。まっすぐ立ち上がるためこの名がついた。

 フラサバソウは茎を立てて繁茂し、小さな青い花を咲かせている様子は、パッと見てタチイヌノフグリに似ている。花はタチイヌノフグリより少し大きく、色も薄く、花を囲む葉が尖っていない。フラサバソウの別名「ツタノハイヌノフグリ」が示すように、葉の形が蔦に似ている。

 小さなふぐり族の世界だが、名前は決して小さくない。

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