日曜日に読んでみよう

 進化生物学は適応戦略の損得をベースにしたモデルをよく使います。ある形態、器官や組織をもつことがその生物の生存に有利か不利かによって種や集団の存続が決定されると考え、そのモデルをつくることによって説明します。モデルによる物語制作は科学では通常行わない方法ですが、進化生物学はこのようなモデルを使って進化過程を推理し、説明します。私たちが二足歩行を獲得したことを説明するために二足歩行が如何に生存に有利であったかのもっともらしい物語をつくり、それが二足歩行を獲得したことの説明の一部になると考えるのです。

 「共生」となれば、大腸菌と人との共生が有名です。同じように人に寄生する小動物もたくさん知られています。細菌やウイルスに感染することに関しても進化生物学的にシナリオを考案することができます。昔は伝染病と言われていましたが、今では感染症と呼ばれています。人と感染症の歴史的な関係は数多く知られていますが、「悪魔の囁き」と呼べるような物語をつくることができます。例えば、COVID-19 は老人と成人病をもつ人をもっぱら攻撃し、正常の大人や子供にはほぼ無害。となれば、人とCOVID-19 は共生できる可能性をもつことになります。互いに助け合う、つまり互いの適応度を高め合うという関係をもつことができることになります。人の集団を健康に保ち、健康な人の割合を一定以上に保つために、一定の割合でCOVID-19 の感染を許すことが適応戦略上有利になってきます。このような(悪魔の)話をもっともらしくするには合理的に見える数理モデルをつくり、それを幾つかのウイルスとその感染に適用してみることです。

 では、ウイルスと人の歴史はどうなっていたのでしょうか。そのために国立病院機構三重病院臨床研究部長の谷口清州(きよす)氏の「「ヒトとウイルス」共生と闘いの物語」(このタイトルで検索すれば、すぐに見つかります)を読んでみてください。とてもわかりやすく、興味深い、様々な物語が述べられています。また、2月20日と少し古いですが、同氏の「新型肺炎「感染の疑い」でも、絶対にすぐ病院へ行ってはいけない理由」(https://diamond.jp/articles/-/229347)も面白い内容です。