時間にこだわり、思索した人たち

 時間についてこだわりをもった重要な人物とその主張を以下に列挙してみよう。

 

Aristotle (384-322 BCE)
時間は世界の構造の基本である。あらゆる変化は原因を必要とする。運動しているものはみな何かによって動かされなければならない。

Archimedes (287?-212 BCE)
時間の流れは事物の究極的な基礎となる固有の性質ではない。

Saint Augustine (354-430)
時間の現在主義、つまり、過去も未来もなく、あるのは現在のみである。

Galileo Galilei (1564-1642)
時間を最初にダイナミックに捉える。

Isaac Newton (1642-1727)
ニュートンは無限に小さい時間間隔の間に有限の距離ですべての力が働くと仮定した。これは運動の作用反作用の法則の証明に不可欠なものだった。古典力学では作用はどんな距離も瞬時に伝播するという考えに対応する「絶対時間」が仮定される。ガリレオデカルト、そしてニュートンが考えた慣性の法則は単純な状況を得るためだけに導入された、理想化された法則である。観測できる運動がそうであるように、実際の運動は不可逆であると彼らは考えた。だが、同時にニュートンは自らの力学法則が時間的に可逆であるという事実でパラドクスを抱え込むことになった。これは彼が予期しなかった困難である。しかし、原因の後に結果が生じるという因果性概念があったために多くの人を悩まさなかった。物理法則における方向の不可逆性を保持するための基礎は、重力が瞬時の作用であることで傷ついてしまう。この仮定が矛盾を含むことをニュートンはよく知っていた。だが、それが重力の正しい記述だと考えていた。

Joseph Lagrange (1736-1813)
物理的時間を空間の4番目の次元と見なすことによって、彼は動力学から時間を消去した。

Nicolas Carnot (1796-1832)
カルノーは準静現象の過程を理想化することによって、因果性から時間を排除できた。

Rudolf Clausius (1822-1888)
観察可能な不可逆性を熱力学の第二法則の一部として導入した。時間の方向に関して、ニュートンの運動法則は対称的だが、エントロピーの法則は対称的ではない。

Ludwig Boltzmann (1844-1906)
ボルツマンによる熱力学の法則への統計的研究が始まるまでは、基本法則の可逆的性格とそれに基づいて説明されるべき不可逆性の比較には誰も直面しなかったゆえに、問題は意識されなかった。力学法則と統計的な要素が結びつくことによって、第二法則の不可逆性が明らかになった。

Albert Einstein (1879-1955)
アインシュタイン相対性理論で目新しいことは、過去と未来の完全な分離である。彼は理論において時間の対称性を仮定したが、使われなかった。対称性は過去と未来の間に完全な区別があるため何の役割も演じなかった。

 

これらの断片だけでは時間とは何かがまるで見えてこない。しかし、長い時間をかけて多くの人が時間について苦悩してきたことくらいはわかるだろう。時間はわかるようでわからず、抽象的でありながら感じることができる、とても不思議な「もの」、あるいは「こと」である。