セイヨウヒイラギ、ヒイラギ、ヒイラギモチ

 セイヨウヒイラギはモチノキ科モチノキ属の常緑高木。真冬に赤い実をつけることから、ヨーロッパではキリスト教が入る以前に聖木となっていた。キリスト教では、キリストの足元から初めて生えた植物とされ、尖った葉や赤い実はキリストの流した血と苦悩を表すと考えられた。また、セイヨウヒイラギは魔力があると信じられていて、クリスマスの飾り付けに用いられる。セイヨウヒイラギの俗称はクリスマスホーリー。正式な英名は「ヨーロピアホーリー」、あるいは「イングリッシュホーリー」。ホーリー(holly)はモチノキ属のことで、ホーリーナイト(聖夜)のholyではない。

 一方、日本のヒイラギ(柊)はモクセイ科モクセイ属で、やはり神の力が宿る「神聖な木」とされ、邪鬼祓いや魔除けのおまじないに使われてきた。棘のある葉に目を刺されて鬼がおっぱらわれた説話が邪鬼祓いの由来。ヒイラギは実の時期も色形もホーリーとは違う。クリスマスの頃が花期で、白い花が咲き、その実は黒く,しかも春に色づく。

 棘のある葉をもつモチノキ属もモクセイ属も、樹齢が重なるとトゲが減少し、丸みを帯びてくる。ヒイラギと比べ、セイヨウヒイラギは早く葉が丸くなる。棘は若木の頃だけで、成木は完全に楕円形の葉になったものも多い。セイヨウヒイラギに良く似た別種に原産地が北米のアメリカヒイラギがある。こちらの葉はセイヨウヒイラギの葉より光沢がなく、厚みが薄く、棘に触ってもあまり痛くない。

 ヒイラギモチもモチノキ科モチノキ属だが、セイヨウヒイラギと違い、成木でも比較的長く棘を保つ(画像)。日本でヒイラギモチがクリスマスの飾りに使われるのは、セイヨウヒイラギより手に入れやすいせいもあるが、葉が丸くなったセイヨウヒイラギより、棘のあるヒイラギモチのほうが、聖なる木として好まれるのかも知れない。ヒイラギモチは東アジアが生息地で、シナヒイラギ(英語では「チャイニーズホーリー」)と呼ばれる。

 図鑑風にまとめるなら、ホーリーには三種あり、


セイヨウヒイラギの葉は厚く互生し、葉身は長楕円形でやや大きく、葉表に光沢がある
アメリカヒイラギの葉は薄く互生し、葉身は長楕円形でやや小さく、葉表は比較的光沢がなく、鋸歯に触ってもそれほど痛くなく、花は白色
ヒイラギモチは葉は互生し、亀甲状に四角張った長楕円形で、角張った先端に鋭い棘

 

となる。最後に、画像はヒイラギモチの赤い実。

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