再度、小さな愚行

 これまで埋め立てられてきたプラスティックは燃えないどころ、純石油製品ですから、石油や石炭と同等の発熱量を持っています。ですから、プラスチックをサーマルリサイクルすることで大量の熱エネルギーを回収でき、火力発電所で燃焼される原油の代替となるのです。 1メガワット時の電力を火力発電するために必要な燃料は、天然ガスなら132kg、プラスチック345kgです。
 近年焼却炉は高熱に耐えるようになり、さらに課題だったダイオキシン発生を抑制できるようになりました。そのため、不燃ごみだったゴムやプラスチックの製品を可燃ごみとして回収し、発生する熱エネルギーを発電や燃料とするのが、サーマルリサイクルです。サーマルリサイクルによって、埋められる廃棄物を減らすことが可能になりました。
 ダイオキシンは、炭素・酸素・水素・塩素が熱せられる過程で発生します。特に、低温でのゴミ焼却時に発生します。プラスチックには塩素を含んでいるものが多く、塩素を低温で燃焼するとダイオキシンが発生します。近年のゴミ焼却施設は、高度の排ガス処理装置を備え、また、高温での焼却処理を徹底しているため、ゴミは完全焼却され、ダイオキシンの発生を抑えることができます。また、今では塩素を使わないプラスチック製品がつくられるようになり、ダイオキシンの発生は極力抑制されています。この技術革新によって、サーマルリサイクルはマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルが適用できなくなったときの次善の手段だったのですが、主役に変わり、「燃やしてリサイクルできる」という誤った解釈が広がりました。
 リサイクルの大原則は、3R(reduce, reuse, recycle)。マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルの後で、それらのリサイクルが困難となったときに初めてサーマルリサイクルが適用されるべきなのです。しかし、今の日本はサーマルリサイクル中心にプラスティックごみの処理が進められ、それに従って地方自治体は焼却場を整備してきました。でも、それは胸を張れるベストの対策ではなく、サーマルリサイクルはreuse, recycle ではないことを知っておくべきなのです。
 ゴミを減らすには、ゴミを出さないことに尽きます。すると、皮肉なことに私の子供の頃のごみのない生活が蘇ってくるのです。地球温暖化を横に置き、それを記憶の中にとどめるか、活用するかは私自身の問題でもあるのです。
*マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルについては私の「国立公園、観光、綺麗なごみ」などを参照してください。