春も盛りだが、足元には淡い紫と白のナデシコの花が見える。カワラナデシコはナデシコ科ナデシコ属の多年草。秋の七草のナデシコはカワラナデシコのことで、別名がナデシコ、ヤマトナデシコ。本州から九州の低地、山地の草原や川原などに生え、高さ30〜80cm。花は3〜4cmで淡紅紫色、茎頂の集散花序に数個がまばらにつく。白花はシロバナナデシコ。
ナデシコは子どもや女性にたとえられ、和歌などに多く登場する。既に『万葉集』で詠まれ、『枕草子』では、「草の花はなでしこ、唐のはさらなり やまともめでたし」とあり、当時の貴族に愛玩されたことがわかる。また、異名である常夏は『源氏物語』の巻名の一つになっていて、前栽に常夏を彩りよく植えていた様子が描かれている。 今ではサッカーの「なでしこジャパン」が有名である。
ナデシコ属は古くから園芸品種として栽培され、また種間交雑による園芸種が多く作られている。中国では早くからセキチクが園芸化され、平安時代の日本に渡来し、四季咲きの性格を持つことから「常夏」と呼ばれた。中国から平安時代に渡来した「唐撫子(からなでしこ:石竹)」に対して、在来種は「大和撫子(やまとなでしこ)」。