マンション街のモクレン

 モクレン木蓮、木蘭)はモクレンモクレン属の落葉樹。花が紫色であることから、シモクレン(紫木蓮)の別名もある。外側が紅紫で内側が白色の花を春に咲かせるモクレンは、平安時代中期に編纂された『和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』にその名が見られ、古い時代に中国から渡来したことがわかる。近年は、同じ中国原産のハクモクレンがより広く栽培されているが、モクレンハクモクレンは花色が違うだけでなく、異なる種である。ハクモクレンの花弁は9枚で、開花後に葉が出るのに対して、モクレンの花弁は6枚、開花中に葉が出て花が終わるころには葉に隠れてしまう。
 湾岸地域のハクモクレンの花は既に終わっているが、モクレンは今咲き出している。そこで、肝心の画像を見てみると、モクレンにしては樹高が随分と高く10mにも達している。注意してみれば、花弁は6枚ではなく9枚ある。モクレンハクモクレンの両方の特徴が見られるということは交配種か。調べてみると、サラサモクレン(更紗木蓮)という交配種だった。
 ところで、コブシは日本原産で、日本全土と済州島に自生する。春先、山地で高木に白い花が一面に咲いているのがコブシだと信じてしまうと、モクレンハクモクレンは都会の公園の花木ということも信じてしまったようなのである。だから、私には画像のようにマンションに囲まれたモクレンは不思議な光景ではなく、モクレンの普通の風景に見えてしまう。これがコブシで背景が同じでも違和感を持ってはいけないのかも知れない。人の印象などいい加減なもので、子供時代の経験がなければ、何が里山にあり、何が都会にあるかなどわからないのである。マンションの敷地内にあるのがモクレンであれコブシであれ、誰も違和感をもたないのが今風といったところなのだろう。

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