オニタビラコ(鬼田平子)

 「野生の動物とペットのいずれが好きか」といった他愛もない問いは意外に人々の関心を集めるのだが、「野草と園芸植物のいずれが好きか」はピンボケの問いと思われるようで興味をもつ人は少ない。野生の植物となればその主人公は野草ではなく樹木であり、野草はさしずめ昆虫といったところか。昆虫や植物が好きな人はかつて博物学者と呼ばれ、野外の観察と分類・収集が主要な仕事だった。野生の環境の中で樹木や野草が圧倒的に印象的なのは、それら自体が環境を構成していて、野生の風景の作り手だからである。野生動物はその風景の中に登場する役割しか与えられていない。
 オニタビラコは漢字で書くと、人名かと思わせるような、ごくありふれた野草で、キク科オニタビラコ属の越年草。道端や庭に群生するが、独立して生えていることも多い。全体にやわらかく、細かい毛がある。茎や葉を切ると白い乳液がでる。
 オニタビラコは、コオニタビラコやその近縁種であるヤブタビラコと混同されることがある。いずれも大きい鋸歯のある根出葉を持ち、細い茎を立てて黄色いタンポポ様の小さな花をつける。コオニタビラコ(小鬼田平子)はタビラコ(田平子)やホトケノザ(仏の座)とも言われ、春の七草の一つである。水田が減少した現在、水田の雑草であるコオニタビラコよりも、むしろオニタビラコの方が普通に見られる。

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