オオイヌノフグリ

 オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢)が野原に咲き出し、地表からも春近しが感じられる。オオイヌノフグリは秋に芽を出して他の植物が繁茂しない冬に横に広がって育ち、早春に多くの花をつけ、春の終わりには枯れてしまう。日本にもともと咲いていたのは、オオイヌノフグリより小さい花をもつイヌノフグリ明治維新の頃、近縁のオオイヌノフグリが日本に帰化。在来種のイヌノフグリは駆逐され、今では絶滅危惧種。私たちに春の訪れを告げるのは、帰化したオオイヌノフグリの方になってしまった。
 驚くような名前だが、和名はイヌノフグリに似ていて、それより大きいために付けられた。つまり、「大きなイヌノフグリ」で、「大犬のフグリ」でも「イヌの大きなフグリ」でもない。オオイヌノフグリの果実は陰嚢に喩えたくなるほど陰嚢には似ていない。そのためか別名は優雅である。まずは「天人唐草」。イヌノフグリを図案化した唐草模様が天人唐草と呼ばれていて、そこから、オオイヌノフグリも天人唐草と呼ばれるようになった。次は「瑠璃唐草」。瑠璃色はラピスラズリのような、少し紫の入った鮮やかな青。ついでながら、「唐草」は江戸時代の帰化植物の総称。

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