ソライロアサガオと「朝顔図屏風」

 誰もが知るアサガオ奈良時代に中国から渡来し、薬草として用いられたのが始まりです。アサガオが観賞用として流行するようになったのは江戸時代。「大輪アサガオ」や、葉や花がユニークに変化した「変化咲きアサガオ」がつくられ、白色のアサガオが登場、その後様々な花色がつくられ、広く栽培されました。
 暫く前に紹介した秋晴れの公園のソライロアサガオ(空色朝顔)は、まだ見事な姿で、花をたくさんつけています(画像参照)。「西洋朝顔セイヨウアサガオ)」と呼ばれることが多く、画像はヘブンリーブルーと呼ばれる品種。ソライロアサガオの中でも、一番人気の高いヘブンリーブルーは正に秋の花です。
 アサガオといえば、鈴木其一「朝顔図屏風」(メトロポリタン美術館、各隻、178cm×380cm、画像は左隻)が想い出されます。あの尾形光琳の「燕子花図屏風」(根津美術館、各隻151cm×339cm)よりも一回り大きいのです。その大きな画面に多数の朝顔が溢れるほどに描かれています。光琳は個々の燕子花も、群生している姿もリアルに描き、背景はすっかり取り去られています。構図はエレガントで、リズミカルな花の連続が広がりを演出しています。金地に燕子花だけという極限までに単純な造形が観る人に様々な想像を起こさせます。
 鈴木其一の「朝顔図屏風」も、朝顔の花と葉と蔓はリアルに描かれています。その特徴は、個々の花の表情が全部異なり、それがリズムとなって屏風全体を覆っています。また、青色岩絵具を使った花の描き方には暖かみや柔らかさがあり、花弁には微妙な色の変化がつけられています。其一は『朝顔図屏風』の花弁の青を描く時に、岩絵具(群青)に混ぜるニカワの量を通常より減らし、その結果、絵の表面に岩絵具の粒子が露出し、光が乱反射してビロードのような花のタッチになっています。
 今咲いているアサガオの画像と其一の「朝顔図屏風」アサガオを見比べ、いずれが本物に近いのかといった愚問をもってしまうのですが、アサガオ自体の表現とすればいずれ劣らずと言ったところで、私にはいずれに軍配を上げるべきか見当がつかないのです。個々のアサガオなら画像、アサガオの本性は其一と言いたくなるのですが…

f:id:huukyou:20181123051445j:plain

f:id:huukyou:20181123051523j:plain

f:id:huukyou:20181123051600j:plain

f:id:huukyou:20181123051645j:plain

(補足)
 朝顔の種は牽牛子(ケンゴシ)と呼ぶのだそうですが、さらに白い種子を白牽牛子または白丑、黒い種子を黒牽牛子または黒丑と分けられています。昔から人との結びつきが強かったことがわかります。牽牛子(ケンゴシ)は峻下剤(激しい下剤)で、即効性です。でも、すぐ効く(腹痛を起こす)だけでなく、水のような下痢となり、強力な利尿作用もあり、その他多くの副作用があり、危険です。ですから、アサガオの種は毒と薬の間にあるとも言えますね。