秋(5):コブシの実

 早春のコブシの白い花は凛として美しい。だが、その実となると不定形で醜い。コブシという樹木そのものがなかなかの存在感をもつのだが、私にはこの花と実の落差がコブシにさらに独特の顔貌を与えていると思えてならない。
 袋果という袋の中に入った実は、緑色から黄色、やがて赤みを帯びてくる。画像は袋果。そして、袋果が割れ、赤い実が覗く。この赤い実の中に黒い種がはいっている。実は外に飛び出すのだが、下まで落ちずにネバネバした白い糸でぶら下がる。鳥に実を晒すというコブシなりの一工夫である。
 春に香りのある白い花を咲かすコブシは古くから日本人に愛されてきた。この花が咲くと田植えを始めたことから「田打桜(タウチザクラ)」または「種蒔桜(タネマキザクラ)」とも呼ばれている。さらに、ヤマアララギ、コブシハジカミという別名もある。モクレンよりもコブシに似ているのが「田虫葉(タムシバ 別名:ニオイコブシ)」。タムシバは萼(ガク)の長さが花弁の約半分で、花は純白、枝がまっすぐに斜上することで区別でき、花の匂いもつよい。

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