植物は地球で生まれ、大きくなって、地球を変えた

 「地球」と「植物」の関係は一体どのように捉えるのが適切なのか。植物が果たした役割は何だったのか。地球は40億年以上の歴史をもち、地表がすべて凍結するとか、突如恐竜が絶滅するとか、波乱万丈の歴史に満ちている。地球の酸素は今約21%だが、その濃度は時代と共に変化してきた。そして、その変化は植物、動物を翻弄してきた。
 35%の酸素を含んだ大気は今より14%も濃度が高い。すると、大きな動物でも簡単に空を飛べるようになる。羽で濃い空気を押すと、身体は楽に浮遊できる。その代わり、空気抵抗が大きくなって、スピードは落ちる。ショウジョウバエを酸素濃度の濃かった時代に合わせて育てると、僅か5世代で14%も大きくなった。豊富な酸素は僅かな期間で生物の物理的な身体のサイズを大きくすることができる。
 植物もずっと進化を続けて、様々な形質を獲得してきた。植物の光合成を助け、形態的にも見事なしなり具合を持つのが「葉」である。この葉が生まれて、植物界全体に広まるまでに5000万年もの歳月がかかった。どうしてそんなにかかったのか。葉をつくる遺伝子それ自体は葉が生まれるよりずっと前に完成していた。ならば、なぜ葉は長い間眠ったままで発現しなかったのか。植物の方で準備ができていたのだとしたら、外的な要因で葉は発現できなかったのではないかと考えられる。この外的な要因は二酸化炭素の濃度である。過去4億年から3億5000万年前の間に、二酸化炭素の濃度は現在より15倍も多かった。温室効果によって気候は当然温暖で、植物は豊富なエネルギー源をもち、悠々自適な生活だった。二酸化炭素の排出量を減らせと今私たちは騒いでいるが、それとは桁外れの二酸化炭素濃度である。この時代の植物を調べると、初期の陸上植物は二酸化炭素を取り込むための気孔を1ミリ四方に五つしかもたなかった。現在の植物は1ミリ四方に数百だから比べものにならない。二酸化炭素の濃度が高かった時は気孔の数が少なくても何の問題もなかったが、濃度が薄くなるにつれ、呼吸するために葉の面積を増やして、気孔の数を増やしていった。植物の涙ぐましい、しかし見事な適応である。
 植物の増殖・変化が地球環境に影響を与え、それが地球気候を変える。これは数百万年単位で漸進的に進行していくため、人間の時間スケールをはるかに超えている。森林が地表を覆うことで雨水がリサイクルされ、有機酸が土壌へ流れ出た。それにともない、陸の侵食によって二酸化炭素が大気中からどんどん取り除かれ、重炭酸塩イオンとなって海の底に埋もれていった。植物の活動は1億年のあいだに陸を削り、その結果、二酸化炭素濃度は急降下し、気候は寒くなり、地球は氷河時代という瀬戸際に追いやられた。地球の消化不良によって、湿地には死んだ生物の残骸が大量に溜まり、大気中の酸素濃度が上がった。それは生物に巨大化という新しい進化をもたらした。

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