ヘクソカズラ(屁糞葛)

 生物名の表示がカタカナではなく、漢字だったとすれば、とんでもないことになるのがヘクソカズラ。言葉の暴力という曖昧な表現をよく聞くが、これは正に漢字の暴力である。ヘクソカズラは昔からとても臭いということになっていて、それゆえ最悪の名前を与えられた可哀想な植物なのである。臭いは進化の過程で身につけた自己防衛メカニズムなのだが、人の勝手な判断はそんなことことにはお構いなしである。では、本当に臭いのかとなると、ニンニクなどに比べれば、それは実に控え目なのである。
 ヘクソカズラ(屁糞葛)の漢字から「屁と糞のような臭いのするつる草」となる。ヘクソカズラの枝や葉をもむと、確かに独特の嫌な臭いがする。この臭いの原因は、ヘクソカズラに含まれているメルカプタンという揮発性物質にある。これはスカンクの屁の主成分と同じもので、虫から身を守るために進化の過程で獲得したと言われている。
 ところが、見ているだけなら嫌な臭いはせず、花の中央が赤く、お灸(やいと)の跡に良く似ていることから、ヤイトバナ(灸花)という別名や、美しい花の姿からサオトメバナ(早乙女花)という別名もあり、これもまた人の勝手な判断の命名である。
 兎に角、人の命名など当てにならないというのが、ヘクソカズラ、あるいはサオトメバナなのだろう。

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