アブチロン

 まずは二つの画像をご覧あれ。誰も同じ種類の植物だとは想像できないだろう。人の知覚能力など大したことがないことを実感できるのがこれら画像で、その植物はアブチロン。薄い紙でできたような花弁をもつ花がうつむきかげんに咲く。一つ一つの花はすぐ終わってしまうが、初夏や秋は花つきがよく次々と咲いてくれる。木立性とつる性のものがあり、株の姿以外にも葉の大きさや花の形も異なり、それは画像で確認できる筈である。黄色い花は木立性のものである(つる性のものはウキツリボクあるいはチロリアンランプとして既に紹介した)。木立性のものは葉がやや大きめで、ときに花が隠れてしまう。熱帯原産だが比較的耐寒性があり南関東以南であれば屋外で冬越しできる。
 私たちにまるで異なるように見える花の容姿は自然の不思議などではない。それは私たち自身が生み出したもの。とはいえ、その容姿すべてを人がつくったなどと考えると大間違いで、人は僅かなアレンジをしたに過ぎない。それでも、僅かなアレンジで人を欺くには十分で、私たちは背後のカラクリをうまく見抜くことができなくなる。そもそも生命のカラクリを未だに見抜くことができないのだから致し方ない。とはいえ、今世紀中にそのカラクリの解明はほぼ確実にできる筈である。
*人は自らの才能がどれだけ創造的かよくわからない。自然のものを模倣するだけでなく、その一部を知り、独自のものを生み出すことができるが、それがどれほど独自のものかは神のみぞ知るで、人にはよくわからない。それは科学も芸術も大同小異で、観察とスケッチ、実験と彫像は紙一重なのである。

f:id:huukyou:20180617045910j:plain

f:id:huukyou:20180617045935j:plain