一重か八重か

 既にヤマブキの一重、八重について述べましたが、画像はクチナシの一重と八重です。クチナシは梅雨どきに大型で純白の6弁花を咲かせて強い香りを漂わせ、秋には橙赤色の果実をつけます。熟しても裂開せず、口が開かないことから「クチナシ」の和名がつけられたとされています。庭木としてよく栽培されているクチナシには、一重のものと八重咲きのものがあります。ドクダミにさえ八重咲きのものがありますから、珍しいことではないのですが、二つは一体何が違うのでしょうか。
 八重咲きは花びらの内側のおしべやめしべが並んでいる場所に、さらに多くの花びらが並んで、花びらだけで花が構成されているように見えるもののことです。普通は、野生の植物にはおしべとめしべがあるのが当然で、このような花は突然変異によるものです。八重咲きの内側の花びらは、おしべやめしべに対応し、それらが花弁化したのが八重咲きです。花弁はもともとおしべやめしべを囲む葉に由来するので、おしべやめしべもそれぞれ小胞子葉、大胞子葉ですから、やはり葉が起源です。いずれも葉に由来しますから、それらがすべて花弁化することはさほど不思議ではありません。でも、八重咲きの花ではおしべやめしべが正常につくられないので、種子や果実は作られない場合が多く、繁殖は株分けなどで行われます。
 バラの花は、一般には八重咲きが普通のように考えられますが、野生種は五弁の花びらだけを持つものです。ウメには八重咲きながらもおしべもめしべも正常な花が見られます。これは、花弁が余分に形成されたものと考えられます。ランの場合、いわゆる洋ランには八重咲きはほとんどありません。他方、東洋ランでは、変わりものが重視される傾向があり、いくつもの八重咲きが知られています。

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