同じ月

 満月が突然欠け始め、やがて赤黒く輝き出す。そして、再び光が射し、月は元の姿に戻っていく。昨夜この皆既月食が起きた。午後8時50分頃から始まり、約1時間後には皆既食になり、11時過ぎまで続いた。皆既食の継続時間は1時間17分。
 皆既月食の一部始終、特に不気味な赤黒い色の月を見て、昔の人々はどう感じたのだろうか。人は不思議な現象に遭遇すると、その現象は何なのかを考え出し、説明したくなる。現象を正確に記録する前に、人は想像を働かせ、自らの生活に結びつけて解釈する。解釈は真実として伝えられ、人の未来や運命に関わる予兆として使われる。不思議な現象は不思議なままに生活世界の運命を左右するのである。不思議な現象の「不思議さ」を追求し、それを当たり前の現象に引き戻してしまうのが科学。謎が謎でなくなるのが科学的説明の真髄で、実に夢がないのだが、誠に信頼できる。縄文人なら、欠ける前の月も、皆既食の月も、元に戻った月も、さらには三日月も半月も同じ月であることをレヴィ=ブリュル風に「融即律」を使って同じ月だと認識するのだろうか…?

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画像は国立天文台提供